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若年患者のターミナルケア 医師の役割と看護師の役割早すぎる「看取り」の困難に、医師と看護師はどう立ち向かうのか

2016年10月20日
若年患者のターミナルケア 医師の役割と看護師の役割

若年患者を対象とした看取りケアの困難

 
40代、50代、60代などの、平均余命に比べ若い時期に「終末期」を迎えることになった患者たち。
 
主にがん患者から構成されるこれらの若年患者に対するターミナルケアには、多くの困難が横たわっています。
 
まず第一に「死の受容」が困難であること。
多くの日本人は「死ぬ時期」を早くても70代以降であると見積もっています。
 
平均寿命から考えれば適切な予測と言えますが、予測はあくまでも予測です。
残念ながら、全ての人が必ずしも70歳を迎えられるわけではありません。
 
しかし、40代・50代の気力体力ともに充溢した時期に「終末期」を告げられても、多くの人はそれを受け入れることができません。まさか自分にそんな例外的な不幸が降ってくるとは。特にがんは体力の衰えが本当の末期にしか生じないこともあり、なかなか自分が「終末期」にあることを認めることができません。
 
それが結果として「死の受容」の難しさに結びついてしまいます。
 
 
第二に「残された時間の乏しさ」も大きな困難です。
 
川越医師によれば、彼ら若き終末期患者に対して使えるターミナルケアの時間はわずか32日。
現代の医学はギリギリの最期まで「徹底して治す」ことに拘っているため、残された時間はどうしても少なくなります。
 
これらの困難を踏まえたうえで、若年患者に対するターミナルケアにはどのようなことが可能なのでしょう。
 
 

若き終末患者たちにできること

 
川越医師は、ターミナルケアにおける医師の重要な役割を
 
「徹底して肉体的な苦痛の緩和をすること」
 
であると定義しています。緩和ケアこそが根幹だ、という考えです
 
がんが進行すれば神経の圧迫や呼吸苦などが生じます。これらの症状に対して、病状の進行に合わせた適切な量の鎮痛剤を投与しなければなりません。 薬が少なければ痛みが引きませんし、多すぎれば便秘や吐き気などの副作用が起きてしまいます。 適切な投薬を行うには医師の経験と技量に基づく、専門的な措置が必要です。
 
川越医師は、この技術的な問題に対処することこそが、「ターミナルケアにおける医師の第一の仕事」だと考えます。
 
 「痛みや苦しみの緩和よりも、お坊さんがやるような(精神面の)ケアを一生懸命するお医者さんがいますが、それは完全に間違っていると思います。医者はまず黙って患者さんの痛みや苦しみをとる。どんなに素晴らしいことを言われても、痛みがある状態だとこんな状態で生きたくないと患者さんは思ってしまいます。そこをまずしっかりとやる。完全に医者の大切な役目なのです」
 
医師としての仕事の本分、それを疎かにしては何もかも本末転倒だ、ということでしょう。
 
苦痛の緩和、鎮静剤の適切な投与、そういった身体的苦痛に対するケア徹底的に行った上で、改めて浮かび上がってくるのが様々な領域にわたるケアである。そういうことなのでしょう。
 
緩和ケアには
 
・身体的ケア
・心理的ケア
・社会的ケア
・スピリチュアルケア
 
の4つがあると言われています。そして「身体的ケア」は最も重要であり、また医師にしかできないケアと言えるでしょう。
 
この医師の本分を差し置いて、宗教者の領域であるスピリチュアルケアに傾倒してはならない、というのが川越医師の考えの本旨と言えるかもしれません。
 
 

看護師の役目の重要性

また川越医師は看護師の役割の重要性を指摘します。
 
看護師の役割は医師の補助という面だけにとどまりません。患者さんの身近で様々な看護をする看護師の仕事は、ある意味で患者さんと「全人的な関わり」を持っていると言うことができます。この意味で、グリーフケアにおける看護師の役割は極めて重要です。
 
患者さんのそばで、長い時間を患者さんや家族と過ごす。そうすることで、自然に患者さんの人生・人間性・家族観の関係・考え方…というのが、どうしても、黙っていても看護師たちの中に入ってくるのです。
 
それらの材料があることではじめて、患者さんのトータルペイン(全人的な痛み)に対し有効な緩和を行うことができる。そういった意味でも看護師の役割は重要だと川越医師は語ります。
 
また緩和ケアの対象は、患者だけではありません。家族のグリーフ(悲嘆)に対するケアも、仕事のひとつです。
 
患者もその家族も合わせて一人の患者としてケアする。ホスピスケアと呼ばれる考え方の理念ですが、それは口で言うほど簡単なことではありません。そしてこれを可能にするのは、看護師という全人的な関わりを持つ治療者を置いてほかにないのです。
 
 
若年患者を対象とした看取りケア。
そこには死の受容の難しさや、残された時間の乏しさなど、多くの困難が立ちはだかります。
 
しかし医師は医師の方法で、看護師は看護師の方法で、その困難に立ち向かっています。
「安らかな死」、クオリティ・オブ・デスという概念が方が広まりつつある昨今、こういった取り組みは極めて貴重なものと言えるでしょう。
黄金のおりん
用語タグ ターミナルケア
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