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死別の悲しみから立ち直るための10ヵ条立ち直りのための具体的な方法とは

2016年05月13日
死別の悲しみから立ち直るための10ヵ条

死別の悲しみから立ち直るための10ヵ条

愛する人を亡くされた悲しみ、その悲嘆に対して行うケアを医療の言葉で「グリーフケア」と言います。死別の悲しみは人間が経験しうるものの中でも最大の経験のひとつです。その衝撃に対処するためには、多くの知識と、努力と、そして時間を要します。
 
死別という打撃が身体面・肉体面に及ぼす影響や、代表的なグリーフワークの方法については前稿「グリーフケアとはなにか」で説明しました。
 
本稿では、実際的なグリーフワークの指針となる10の考え方について解説していきます。
 
この「10の指針」は医師・クリスチャンとして自死遺族の喪失問題に精力的に取り組み、長年遺族の遺族の相談相手となってこられた東洋英和女学院大学大学院教授の平山正美氏によって提唱されたものです。
 
氏は青年時代に親友の自殺と遭遇し、その経験から精神疾患と自死の関係、遺族のグリーフケアの問題について研究を始められた専門家です。これらの指針はいま苦しみの最中にいる遺族の方々にもきっと助けになるのではないかと思います。
 
 
第1条 悲しみにはいろいろな側面があることに気付く
「愛する人を亡くす悲しみによって、はじめて他人に優しくなれることがある」と氏は指摘します。
優しさの「優」という字は「人」に「憂う」と書きます。ひとは憂いを知って、はじめて優しさを知るのです。
悲しみには様々な側面があり、その全てが悪いものではありません。悲しい出来事を様々な側面から眺めることが、心のゆとりに、そして悲しみを突破する切欠に繋がります。
 
 
第2条 別の角度から死別の経験をとらえなおす
悲しみを「自分の立場」からしか考えないことは、自分の視野を狭めてしまいます。例えば「他者の立場」「人類全体の立場」など、自分の体験をより俯瞰的な視線で眺めてみましょう。そうすることで、自らの喪失を普遍化し・共有化できるのです。
 
「自分の立場」だけで物事を考えると、多くの日本人はつい自罰的な考えに捕らわれてしまいます。「あの時こうしておけばよかった」「あの人が死んでしまったのは自分のせいだ」など…。しかしこのような考えはほとんどの場合は非現実的で、預言者か、神さまでもなければ不可能なことを自分に要求していたりもします。
俯瞰的な視点で自分の体験をとらえなおすことができれば、このような考えからは解放されるでしょう。
 
 
第3条 悲しみを表現してみる
悲しみを自分の中に押しとどめず、外に吐き出しましょう。
思いっきり泣くこと、誰かに話を聞いてもらうこと、故人への想いを手紙にすること、絵画や詩などのアートとして悲しみを表現すること、いずれも強い癒しの効果があります。
 
グリーフワークにおいて一番やってはいけないことは悲しみを表現することを「我慢」し、それを内に留め続けることです。吐き出せなかった悲しみはやがて身体の中で淀みとなり、自らの心身を蝕み始めます。
 
カウンセリングや遺族会など、思いを吐き出せる公的な場も現代では数多く用意されています。悲しみを溜め込まず、外に吐き出すようにしてみてください。
 
 
第4条 悲しみを癒すための組織を利用してみる
前述したように、今日の日本には家族を亡くした人たちで作る自助グループや、電話相談などを行うボランティア団体があります。
これらの活動に参加することは、前段の「悲しみを表現してみる」ことの助けにもなりますし、悲しみを共にする仲間を得ることにも繋がります。
インターネットで「遺族 自助グループ」などで検索すれば、多くの団体が見るかるはずです。
 
同じ経験を共有した方々とは、不思議と深いところで気持ちが通じ合うものです。人との繋がりはきっと悲しみを癒す助けとなります。
 
 
第5条 過去の苦しい体験を振り返ってみる
どんなひとでも、長い人生の途上において様々な苦しみを経験しています。病気、失恋、離別、挫折、解雇、破産…。それらの体験を振り返り、自分はそこからどう立ち直ったのかを今一度考えてみてください。悲しみから回復するための自分なりの方法を、誰しも持っているものです。
「あの苦しみを乗り越えられたのだから、今回もきっとなんとかなる」と考えられれば、悲しみを克服することもそう遠い未来ではありません。
 
 
第6条 亡き人が遺したすばらしさを見つける
亡くなった人が遺してくれた素晴らしいものはきっと沢山あるはずです。
資産や遺品のような形のあるものから、考え方、思い出、愛情などの、目に見えないものまで。故人が遺してくれたものを確認し、それが今も息づいていることを知れれば、故人が今もあなたの胸の中に息づいていることを感じ取れるはずです。
 
死別の悲しみはとても言葉で表せないほど強いものですが、死別によって見えてくるものもあるはずです。それを見いだせたとき、癒しは始まっています。
 
 
第7条 死を喪失ではなく解放としてとらえてみる
自分に近しい人を亡くすということは、悲しみであると同時に、ある種の「解放」である場合もあります。例えばそれは重い介護からの解放であったり、夫婦という契約からの解放であったりもします。
 
死別は、ある意味では自由を得る切欠でもあるのです。
 
 
第8条 夢のリラックス効果に注目してみる
現実を離れた夢の世界では、残された人は愛する人と再会することができます。悲しみ、病み、苦しんでいる人にとって、夢のもつ癒しの力は決して馬鹿にできません。
 
そもそも睡眠には悲しみを癒す力があると言われています。夢の持つ癒しの力に注目することは決して無益ではないでしょう。
 
 
第9条 悲しみを和らげる信仰を考えてみる
悲しみや苦しみに耐える上で、信仰は大きな助けになることが知られています。例えば終末期においても、信仰を持つ患者はそうではない患者と比べ死を受容し穏やかな気持ちで旅立つ傾向にあるようです。
 
死別の悲しみを乗り越える上で、信仰心が助けになる場面は多々あるでしょう。神父・住職などの聖職者には、死別の問題に取り組む方も数多くいらっしゃいます。必ずしも特定の教派に所属する必要はありません。たとえば無宗教の立場から聖職者のお話しを伺ってるなどの方法でも、大いに効果はあるでしょう。
 
 
第10条 悲しみを社会化する
悲しみの「社会化」とは、亡くなった人の遺志を社会に還元させることです。たとえば拒食症で早逝した歌手のカレン・カーペーターの両親は、遺産の一部を使って拒食症の研究機関を設立しました。またがんで亡くなったジョン・ウェインは自分の遺産をがん研究所の設立に寄贈しました。
 
このように故人の遺志を社会に還元していくことは、故人の人生を形に残し意義あるものにするという意味で、大いに残されたものの慰めになります。もちろん前述した2人のように大規模なものである必要はありません。遺産の一部を寄付する、記念樹を植える、ボランティアなどで活動してみる、こういったことも立派な悲しみの社会科です。
 
悲しみを社会を変えるエネルギーに変えていく。このような形で悲しみが昇華されるなら、こんなに素晴らしいことはありません。
 
 

終わりに

 
以上、「死別の悲しみから立ち直るための10ヵ条」でした。
これは日本の研究者 平山正美氏による指針ですが、これが必ずしも全ての場合に有効だとは申しません。他の国や文化圏ではまた少し事情が異なるでしょうし、日本人でもすべてのひとが同じ指針で癒されるかと言うと必ずしもそうだとは言えないでしょう。
 
例えば、以下の指針はアメリカのグリーフカウンセラー、E・A・グロルマン氏による「死別の悲しみを癒すための十の指針」です。平山氏の指針とは少し異なるのがわかります。
 
 
1.どのような感情も全て受け入れよう。
2.感情を外に表そう。
3.悲しみが一夜にして癒えるなどとは思わないように。
4.わが子とともに悲しみを癒そう。
5.孤独の世界に逃げ込むのは、間違った方法。
6.友人は大切な存在。
7.自助グループの力を借りて、自分や他の人を助けよう。
8.カウンセリングを受けることも、悲しみを癒すのに役に立つ。
9.自分を大切に。
10.愛する人との死別という苦しい体験を意味ある体験に変えるよう努力しよう。
 
 
ただ平山氏、グロルマン氏の指針を比べてみると
 
・悲しみを外に表すこと
・自助グループなど他者の力を借りること
・悲しみを社会化すること
 
が有効であると考えているのは、両者とも完全に一致しているようです。
精神医学の分野でも、苦しみや悲しみを自分ひとりで抱え込むことは重大な病の原因になりうると繰り返し注意されています。
 
まずは感情を少しづつ外に出すこと、そして助けを求めることから始めていくのが良いのかもしれません。あなたの悲しみが少しでも癒されることを、心よりお祈りしています。
用語タグ グリーフケア
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