医療・介護から看取りを支える人たちのインタビュー ”ひと”

インタビュー“ひと”
看取りを支える人たち - Human Inteview -

「看取り」をめぐる現場の視座【1】

Profile


山田 洋子ケアマネジャー

在宅のお看取りも含め、経験豊富なケアマネージャー。 介護や医療の多数の専門職の尊敬を集める存在。

ケアマネが現場で見た、看取りの場の実際

核家族化等の時代の流れで各個別家庭内での自助のみによる介護が困難さを増していく中、2000年には「社会で介護を行う」という趣旨で介護保険制度が始まった。

 

しかし、個別の家庭単位でみれば、この介護保険を駆使しても重度の要介護状態となった身内を長期に渡り在宅で支えていく際の家族に掛かる負担は大きく、特に共働きで家計を支える必要がある家庭や、介護者世代が独り身である場合等、「夜十分な睡眠がとれない生活が続く」であったり、「日中の介護を担う手が足りない」といった問題に直面しがちである。

 

他方、施設入所を考えた場合でも、比較的料金が抑えられる特別養護老人ホームには多くの待機者がおり簡単には入所できない。また、一般に利用者負担が高額となりがちな有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅等の場合には経済的理由で利用できない人たちも多い。

 

そうした困難をかかえた我が国の介護やその先の看取りの実際について、現場で高齢者本人や家族を支えるケアマネジャーとして、在宅での看取り支援についても豊富な経験をもつ山田洋子氏(仮名)に話をきいた。

 

本人の希望、家族の考え 

編集部:

ケアマネとして支援されているご家庭で、何割ぐらい最期を在宅でお看取りされて亡くなっていますか?

 

◆山田洋子氏(仮名 以下、山田)

自宅で亡くなった方は1、2割。やっぱり少ないですね。最期は緊急でどうしても病院に行きますから。もう心肺停止になっていても「一応…」ということで病院へ行く事も含めて病院で亡くなられたとしてカウントしていますけど。

「なんとか自宅で最期は…ということで、ぎりぎりでご自宅に帰られて亡くなられた人とかもいらっしゃいますが、やっぱりほとんどは病院ですね。やはり病院が多いですね。

 

編集部:

ご本人の希望とご家族のお考えというか実際上の都合というところでズレがあることもあると思うのですが、そのあたりはどうですか?

 

◆山田

そうですね。ご本人は当然家にいたいですよ。ご自宅に。

だけどご家族様にすると、最期が近づいてくるとなかなか「ご自宅で看取る」と決断することは難しくなってくる。看取るための家族の介護力が確保できないのではないか、手が回らないのではないか、と。だから、「病院のほうが安心」という方が多いですね。現実は。

 

編集部:

そのあたりの家族の考えというのはどの段階で固まってくるものでしょうか?ある程度ご本人がお元気なうちから、ご家族の側でそういった心づもりを固めていらっしゃるのでしょうか?

 

◆山田

ご本人の気持ちがなんらか行き着く前に、家族の間である程度心づもりが固まるプロセスがありますね。

例えば「余命がどれぐらいですよ」って分かる病気もありますよね。そういったときに、病院でカンファレンスが開かれます。

具体的には、在宅での緩和ケアを選ぶか、それともこのまま病院で治療を続けるのか…という選択を迫られるわけです。

 

実際の事例なのですが、今抱えている方の中に危篤の方が二人おりましてそのお一人、自営業の方で5年前に脳梗塞で倒れられて、それまで一緒にやっていた息子さんが父親の跡を継いで一人で事業を回すようになりました。お母さんは体調が悪い。それで倒れた後はその息子さんが自営業を細々とやりながら、それはそれは献身的な介護をされていました。私のほうでも、訪問入浴などいろいろ手配させていただいていましたが。

 

そしたら、徐々に良くなっていったのですね。それで、昨年がちょうど倒れて4年目だったのですがもう絶好調になってしまって。(笑)

介護度が4から3、昨年は1になったんですよ。それで、そのころの目的は「なんとか地域の銭湯に行きたい」と。お友達も待っているからと。それでようやく昨年は1か月に2回ぐらい銭湯に行けるようになったんですよ。地域の人も喜んで「よくぞここまで回復した」と。

そうしましたら、年が明けて1月ぐらいからちょっと風邪をひかれて、肺炎を起こしたのです。寝たきりが続きますよね。そこから一気に悪化しまして、今度は認知症状が出てきまして、それで体重もどんどん減ってしまって。

 

今年9月にケアマネ契約つまり居宅介護支援契約の更新があったのですね。それで私も立ち会って、もうその時は寝たきり状態でした。更新が9月30日に終わって、すぐに10月に入って伺ったときに「ちょっと体調がおかしい」といった状況でした。

食事も座って取れない状況だったので「介護用ベッドを入れてこういうふうに…」という展開になりました。介護用ベッドとかは家族はそれまで反対だったのですが、「このままだと喉に食べ物がつかえたりするから」ということで。

 

「来週手配します」と言っていたら、その日に肺炎を起こして病院へ入院したのです。入院をして二日目ぐらいに、私もお伺いできたのですが、点滴で気持ちは元気になって、体は動かないですけれど。「もう情けないよ」「早く元気になりたいよ」とおっしゃるので、「大丈夫よ。このまま安静にしていれば。ただ、肺炎を起こしてるから落ち着いたらおうちに帰りましょうね」って言って。

 

さらにその二日後に行きましたら、もう昏睡状態みたいになってしまっていました。病院の方とお話をしましたら「もう食事はダメ。検査したら食道がダメなので通らない。生きていくために経管栄養ですね。点滴か、あとは胃ろうですね。」と。

「胃ろうにするかどうするか」というこの選択を迫られてご家族で「はいどうぞ」と決められる方は少ないです。ただ、こういったことで困るのは、延命措置っていうのは、ご本人に意識があればなおさらつらいことだし、ないとしても(これは私の個人的な考えですけれども)、食べるってことは、お口に入れて始めて「生きている」という実感を得られる行為だと思うのですね。ここに穴を空けて栄養を補給するということと食べるということは意味が違う。

もちろん家族にしたら1日でも長く生きてもらいたいです。それは生きていてほしいけれど、いつも意識がなくて人工的に生かされ続けていく、こういう状態が、これが果たしていいのかどうかですね。この方のように心臓が強い方の場合は特にこういった展開になりがちです。実際、家計を考えますと難しい。

 

病院としては「どういった結論でもいいから今すぐ決めてはんこ押して」というのが本音です。こういった状況ですぐに決断を迫られて、家族としては「やっぱり生きていてほしい」という思いと、家計のことも考えるから、悩むわけです。でも今はどうでも早急に決める必要があると。胃ろう造設の時期もあるということで、早く決断しなければならないと。ただ、胃ろうになった場合、その管理には医療的なサポートが必要ですから「十分な医療資源のある施設や病院へ」と病院側はおっしゃられるのだけれども、今度は家計が持たないわけですね。1か月最低でも25万。病院だと30万は必要です。今は自営の事業も縮小してしまって息子さんは外へ働きに出ておられていて、病気のお母さんも抱えて、毎月そんな。もう一人兄弟がいらっしゃるけど、負担は期待できない状況でした。そうすると、やはり家計を一番に考えるしかなく、結果として在宅を選びました。

 

先生に聞いたらしいです。どこまで生きられるか。ただ、どういう意味でおっしゃったのか分からないのですが、「まあ点滴で2年は大丈夫だろう」とおっしゃったと。でもこういうことは実際は分からないことですね。結局在宅で支えていこうということで、「胃ろうはやめてただ経管栄養だけでいこう」という判断になりました。

こういったことは過去にもいっぱいあるのですね。

 

でも、これが本人にとっていいのか悪いのか分からないのですけれども、そういう実際があって。

今週その方の退院に向けて在宅でどのようにしようかと話し合いを進めています。あくまでも、家族は病院へ入ってくれたほうがいいんですよ。でもやっぱり家計の点から、おうちで介護保険を使って自費の分は負担しなければなりませんが病院よりはずっと軽いということで。

訪問の看護師さんを入れたり、訪問のお医者さんが入ったり、訪問入浴、福祉用具を入れたり。それからあと当然ヘルパーも入れないと、おむつ交換は奥さんではできないので。介護保険って使える点数に上限があるんですね。これだけ必要なサービスを積み上げると絶対その範囲内では足りないのですが、それを超えた部分は全て自費、つまり10割負担になるのでこれをいかに抑えようかという…。

その計算を急いでやっているのですけれども、それでも病院に入るよりは金銭的な負担が大分少ないので。ただ、これがどこまで持ちこたえられるかっていうことなのですけどね。

在宅と療養型病院 掛かるお金は?

編集部:

家計負担がカギになるということですが、こういった状況のケースですと病院か在宅かで自己負担ってどう変わってくるのでしょうか?

 

◆山田

病院とか施設に入るだいたい月額25万円ぐらいはいりますね。今回のような案件で検討される療養型の病院だと30万はかかります。

在宅ですと、介護保険が介護度によって使える点数が違うのでここで大きく左右されます。介護度5だと1か月30万ぐらいは使えるわけです。その中の1割負担ですから、3万円で済みます。これ以上点数が増えた分は自己負担なので、ちょっと正確には計算してみないと分かりませんが、点数が超えた部分も10万円とかそれ以上行かないと思いますね。いろんなものを使っても10万までいかないと思います。ケアマネとしてはそこをいかにケアプランを上手く組んで本人や家族の負担や満足度とバランスを取りつつ、うまく点数を抑えて家計の負担をかけないようにと。

いずれにしても施設とか病院に入るよりはうんと安いです。ただ、その分家族がみんなで協力をし合わないと難しいんですけれども。支援しているご家族の中には、「絶対おうちで看る」っていうすごい決意のもとで何人もおうちで看取られていた方も過去いく人かいらっしゃいましたね。

 

編集部:

なるほど。この段階では「家で看取るかどうか」というよりも、「この重篤な状態で病院や施設を頼るのか家で療養するのか」という選択状況なのですね?

 

◆山田

そこがその時点での選択ですね。それまで入院されていた通常の病院に「入院させ続けて欲しい」と希望していても、病院は死ぬまで置いてくれないわけですよ。その病気に対して「もうここまでですよ」となると、あとは終末期で最期まで看てくれる療養型の病院へ行くか、あとはそういう医療の施設へ移るしかないんですよね。

それか、あとはおうちでということですね。結局おうちで最期までと思っても、最期になるとどうしても救急車呼ぶような事態になりますから、最終的には病院が多いけれども。でも、やっぱりおうちでっていう。やはり家族ですね。家族次第ですね。家族の協力がなければおうちでっていうことはちょっと難しいですから。

 

編集部:

いわゆる療養型の病院ですが、お金の問題もありますが、そもそもかなり入るのが難しいといったイメージがありますが。

 

◆山田

そうですね。それは入院した病院にいらっしゃるソーシャルワーカーが、そういう所を探して連絡を取って、調整を図って入れてもらうということですね。

家計負担の問題はありますが、通常空きのあるところは見つかります。ただ、有料老人ホームとは違って療養型の病院の場合は病院の紹介だったりとかそういうのがないと入りにくいですね。

第三の選択肢はあるのか?

編集部:

なるほど。こういったようなケースの場合は、ある程度お金の負担を覚悟して入院先の先生やソーシャルワーカーの方に協力いただき療養型の病院に行くのか、それか家で、家族の負担は大きいけれども頑張るっていうのとあるわけですね。この2つ以外に他に選択肢はありますか?

 

◆山田

もうそれしかないですね。在宅を選ぶか、どこか医療の充実した施設か病院ということですね。医療の充実っていうのは、例えば胃ろうなんて胃に穴を空けるわけですが、有料老人ホームでも看護師がいないと絶対ダメなんです。一般企業が運営している高齢者専用賃貸住宅、高専賃っていいますけど、そういう所だと看護師がいるとは言っても常駐ではないことが多い。常駐で看護師が毎日いる状況を作ろうとしても人材が確保できないわけです。

 

あと、今は介護職員も研修を受けて「胃ろうの管理ができますよ」という制度ができていますけれどもこれもまた怖いもので。研修行ってそのときは「はいOKですよ」って資格をもらえても、現場でそういう胃ろうの処置ができる人が一人では無理ですね。やっぱり三~四人。もっと言えば、全員ができないと対応できないと思います。シフトの関係で休みとかもいろいろありますから。だからまだまだそういった意味では厳しいものがある。「研修を受ければできますよ」といってもやるほうも怖いし、それで受ける方がどうなのかと…。その辺はありますね。

 

編集部:

なるほど。そうすると、療養型の病院かもしくは自宅かっていう以外に、一応、有料老人ホーム、高専賃・サ高住という選択肢もありますけれども、現実的にはあんまり候補にはなりにくい、選択肢としては難しい?

 

◆山田

そうですね。今回のケースのご家庭の場合、まず気持ちは当然家で看てあげたい。だけど、条件的には無理があるわけですよ。息子さんはいない。母親は病がある。こういう状況であれば、家計が許せば療養型の病院に皆さん無理して行きます。でも、この方は本当に家計が大変なので、在宅としつつなんとか介護の力を借りてしのがなきゃしょうがないという。こういった現実の状況からのやむを得ない選択としての在宅です。

 

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更新日:2016年03月07日


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