医療・介護から看取りを支える人たちのインタビュー ”ひと”

インタビュー“ひと”
看取りに取り組むフロントランナーたち - Human Inteview -

訪問看護ステーションとホスピスの連携【1】

Profile

カイロス・アンド・カンパニー株式会社代表取締役社長
高橋 正業界人

カイロス・アンド・カンパニー株式会社(小田原市) ナースコール株式会社(名古屋市)

「職業家族」として最期まで自分らしく生きる人生を支える

入居者全員で囲めるよう6人用のダイニングテーブル

胃ろう等の非経口摂取や点滴、さまざまながん治療の開発など、医療の進歩とともに私たちが「生かされる」時間はどんどん伸びている。ただ、それらは本当に本人が「自分らしく生ききる」ことに有効なものなのか、を判断することもより難しくなっているといえるだろう。

「情報過多だが個人個人に合った正しい情報が少ない時代。そばで家族のように支え、アドバイスできる『職業家族』とともに終末期をデザインすることが、後悔のない最期を迎えていただくうえで重要なこと」と話す、カイロス・アンド・カンパニー株式会社の高橋正代表取締役社長に話をきいた。

ターミナルケアを重視した起業

重篤な利用者の多いデイサービスであるためそのための設備も整っている

高橋氏は一級建築士の資格をもち、病院建築や公共施設の設計、デザイナーズマンション等の開発に携わったのち、介護の世界へ。介護施設の運営等を行っていた株式会社ユーミーケアでは、代表取締役社長に就任。その後、同社が別グループに編入されるとともに代表を辞任し、2012年12月にカイロス・アンド・カンパニー株式会社を創業した。

 

2013年には、訪問看護ステーション「訪問看護ファミリー・ホスピス本郷台」、2014年には訪問看護ステーション「訪問ファミリー・ホスピス小田原」を開設。そして2014年8月に、「ファミリー・ホスピス鴨宮ハウス」を神奈川県小田原市に開設した。

 

日本初のシェアハウス型ホスピス住宅となる「ファミリー・ホスピス鴨宮ハウス」は、3階建てで、1、2階はそれぞれ定員6名のシェアハウス型療法住宅、3階は定員10名のホスピスデイという構造になっている。主な入居者はがんや難病患者になる。

 

このような訪問看護ステーションとホスピスが連携したサービスを始めた理由を「根幹的・絶対的なニーズである『死』に正面から向き合っている介護事業者が少ないから」と話す。

 

「弊社創業までに10年ほど介護業界で働きましたが、そこで直に感じた高齢者の方たちの大きな関心事・心配事が『認知症』と『死』でした。この2つに対して漠然とだったり具体的だったりと関心が高くなったときに、施設への住み替えや介護等のサービスを探し始めることが分かってきました。認知症はいずれ薬が開発されるなど克服できる可能性はありますが、死は必ず全員に訪れる。そんな根幹的・絶対的なニーズであるのに、多くの介護事業者や職員も、国の政策的にターミナルケアが重視されてきたからやるけど、本音は取り扱いたくない。そんな未成熟な領域に真正面から向き合った介護事業者が必要だと考えました」

「職業家族」として患者を支える

「職業家族」としての訪問看護師の活躍に期待を込める

そんな死に真正面から向き合うために重要な存在となるのが、同社スタッフがになう「職業家族」だという。

 

「終末期をどう過ごしたいのか、その間に今までやり遂げなかったことを行っておきたいといった場合、それをできる可能性があるのかを含めて、医療的にはどういう支援が必要なのかはかなり専門性がないとアドバイスできない部分も多い。医療の地域資源にどのようなものがあるのかなどについても隣でアドバイスできる、専門性と家族のような心づもりをもつ存在として『職業家族』が必要だと感じています」

 

職業家族が本人や家族とともに考えるのが、亡くなる前、終末期をどのように過ごしたいかをデザインする「アドバンスケアプランニング」だ。

 

「たとえば延命治療がありますが、『なんとなく痛みや苦しみの時間が長引きそうだから』という漠然としたイメージで延命治療は望まない方が本人にも家族にも多い。しかし、実際に胃ろうを設置しなければ1週間で亡くなりますよ、といった場面に直面するとその時点では意思表示ができない状況の本人に代わって多くの家族が胃ろうを選択する。また、老衰で亡くなろうとしているお年寄りに対していざとなると救急車を呼ぶことになり、結果本人の意思はよく分からないままに病院でいろいろな延命措置が施される。多くの方が亡くなるまでの過程を医療とどうかかわっていくのかという具体的なデザインイメージができていないまま終末期を迎えてしまっている」

 

訪問看護ステーションの充実が課題

職業家族を担うのに最も適しているのは、訪問看護ステーションの看護師たちでは、と話す。

 

「介護保険だけでみるとケアマネジャーがこの役割だと思いますが、終末期と考えたときに医療的な専門知識が必要であったり、医療機関との連携が非常に重要になってくる中で、なかなかケアマネジャーがそこをになうのは難しい。介護職はまだまだ医療的知識が少なすぎるし、医師では専門性が強すぎてしまう。そうなると今の制度のなかでは、訪問看護ステーションの看護師たちが担っていくのが一番機能するだろうと。看護師は病院での看護や医療の在り方に疑問を持っている人が多い。『この医療処置は本当に必要なのだろうか』と疑問を抱えながら医師の指示に従って処置をしていたりする。看護師は今の医療でどのようなことが起こっているのか患者の視点に近いところで目の当たりにしている。だから語れる」
【関連:ファミリー・ホスピス鴨宮ハウスで働くスタッフの実際の声

 

しかし、訪問看護ステーションは足りていないのが今の日本の課題だ。

 

現在全国にある訪問看護ステーションの数は約8,200ヵ所。国はかつて、2004年までに訪問看護ステーションを全国に9,900ヵ所、中学校区に1つという目標を掲げていた。10年以上たつ現在でもまだその目標には届かない。

 

高橋氏も、訪問看護ステーションは「介護保険事業の中では非常に伸びの少ない事業」と話す。その大きな原因に「訪問看護を目指す看護師が非常に少ないこと」を挙げる。

 

「看護師の免許を持って実際に働いている人の3、4%程度しか訪問看護に従事していない。なぜそれほど人気がないかというと、看護師が病院での患者とのかかわり方と訪問看護師の患者とのかかわり方とで、責任の重さの違いが大きい。訪問看護では指示してくれる医師がいないなかで自分で判断して動かなければならない場面が格段に増える。判断するためには、患者さんだけでなく介護者である患者の家族の状態も含めて観察しなければならない。また、24時間365日、電話での相談に応じ、必要があれば出かける場面もあるといった常に臨戦状態の緊張感を強いられてしまう。このような過酷さがあるのに、病院に比べると若干だが報酬も劣る。なるほど、これは看護師がしたいと思える仕事ではないなと」

 

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更新日:2016年04月15日


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