医療・介護から看取りを支える人たちのインタビュー ”ひと”

インタビュー“ひと”
看取りを支える人たち - Human Inteview -

「おひとりさま死」のクオリティ・オブ・デス(QOD)という視点 板橋区医師会訪問看護ステーションから

Profile

板橋区医師会訪問看護ステーション
滝沢由美子看護師

板橋区医師会訪問看護ステーション所属看護師

一人暮らしの老後をどうするか

高島平団地の高齢者率、50%を超える

板橋区の要介護認定者の48.3%、独居状況

 

「一人暮らしの老後をどうするか」はこの地域においてもはや避けられない課題

 

自分自身がどこでどう暮らし続けたいのか?を考えねばならない時代に。

一人暮らしにおいて終末期の過ごし方を自ら選択しその意思を周囲の支援者たちに把握してもらうことが、QOL・QOD向上のカギを握る。

 

つい最近も独居高齢者の在宅での看取りをサポートされた板橋区医師会訪問看護ステーションの滝沢看護師と井上部長に話を伺った。

 

 

独居・在宅で最後まで暮らしたKさん

 

98歳のころ一人暮らしの自宅で倒れているところを発見され入院。

本人は積極的な治療をはっきりと拒否。家族・病院もそれを了解し、退院し、在宅療養を開始された。

最終的に在宅のまま亡くなられた。享年102歳であった。

 

 

家族のかかわり

 

遠方にお住まいではあったが家族はいらっしゃった。

もともとしっかりされていた方で、自らの暮らし方や先行きについて本人が自らきちんとした意思を持っていらっしゃった。

遠方に住む家族の最大の支援はその意思を理解し、否定・批判しないことであった。

そして、実際のサポートの1番はその意思を実現するためのお金。またADLが低下し普通の食事が食べられなくなった段階での食材の工夫など。

 

ただし、直接の子供はすでに70~80歳代と高齢で移動もままならず、直接的な介護援助は孫たちが担うこともあった。それでも、顔を見に来る子供たちは本人にとっても力となる存在だった。

 

 

ひととなり

 

局面が変わっていく段階でも本人の意思のブレはほとんどなかった。

常に周囲の関わる相手に感謝される方。訪問してくる在宅医療・介護チームのメンバー一人一人にも感謝の声をかける。

自分が動けないということで来てくれたことへの感謝とねぎらいを欠かさない。看護師や介護士が帰る際にも必ず身を案じてくれる人であった。

「いつも介護士との世間話をしっかりと覚えていて、最初は毎朝テレビを見ているのかと思ったほど…。介護士さんも刺激されていたようで張り合いを持っていた。こういう信頼関係が築かれていくのも在宅の良さの一つ」

 

「こちらが何かを提供するだけではない。患者さんからいただくこともたくさんある」

担当の訪問看護師滝沢さんは語る。

 

 

死のタブー視を乗り越えることの重要性

 

平成25年の社会保障制度改革国民会議で「医療提供する側だけでなく、医療を受ける側も、ともにQODを考えねばならない」と示された。が…実際にそれを推し進めることのできる人は少ない。

 

現場でかかわる訪問看護師の役割には、QOL・QODの考え方やその実現方法を伝えていくことも含まれていると考えている。

しかし、実際に深刻な何かが起きるまで考えにくい。しかし、その何かが起きてしまったときは、追い詰められていたりと、なかなか落ち着いて考えることができない状況であることも多い。このジレンマをどう解消していくのかという問題意識を持っている。

 

そのために、「元気なうちから死をタブー視しないで周囲の人と話し合える環境づくりが必要だ」と感じている。

本人と家族の間で。また、本人や家族と、近所の人や専門職との間で。

それが、いざというときに本人の意思を尊重してもらえる人間関係となる。

 

 

本人が、自分の意思を明確に他者に伝えるために重要なことは?

 

まず、話せる能力つまり会話をする力や認知する力があるかが問題となる。これは疾患の内容と深く関わる。

また、伝える相手の確保が必要だ。これは、同居の家族が重要だが、今回のような独居の場合には、家族のみでなく、支援チームである在宅医やケアマネ、看護師、そしてヘルパーといった専門職が特に重要となる。

 

身寄りがいない場合も、同居の家族がいない独居の場合でも、本人の意思が明確に共有されていれば在宅支援チームはそれに沿って動くことができるのである。

 

 

かかわる専門職、特に訪問看護師による本人意思の引き出しや受け止めが重要になるのではないのか?

 

その通り。ただ、在宅医療にかかわる看護師の意思決定支援トレーニングはすでにかなり進んでいる。

具体的には、まだまだ元気なうちの日常的なかかわりの中で、「食べられなくなったら、飲めなくなったらどうするの?どうしたいの?」といった会話を意識的に行っている。

こういった、日常生活に関する話の延長の中で、終末期にかかわることにも話がつながっていく、死をタブー視しない会話に自然とつながっていくことができるのである。

 

「母さん、いつもこう言っていたよね」に戻れることが、いざというときに、慌ててしまいがちな状況の中で重要な意味を持つ。

いったん始めてしまった治療をやめる決断はつらいだけでなく、法的にも困難な場合がある。あらかじめ家族や親族、かかわりの深い人たちの間で、本人の意思・選択を共有している関係づくりが重要となる。

 

また、最初は拒絶的な人も多い。しかし、常日頃かかわっていく中で大きく変わる人もまた多い。

在宅での介護保険利用には、他人が家に入ってくることへのストレスや抵抗感を伴う。つまり、誰が来るかわからないことへの怖さである。訪問看護師の力量には、「そこを察してどう関わっていくのか?」という側面も含まれる。

「同じ行動でも成功したり失敗したり…。振り返るといろいろ他のやりようも考えられるのだが、実際はそのときだからこそといった局面の中での判断であって、再現性がえがきにくいことも多い」

 

「時間はゆっくりかけます。急にわかってもらおうとは思わず焦らないことにしています。私には器用な技はないですから…」(滝沢看護師)

 

「相手を見ながら押しすぎず引きすぎずといった塩梅です。素質もあるでしょう」

「人により得意なアプローチは違います。なので利用者と専門職の相性も管理者として意識する点です」(井上部長)

 

 

本人のQOL・QODを高めていくサポートが行える専門職をどう育成するのか?

 

家族や本人を尊重したかかわり方が在宅の基本。

その基本的な考え方を、同行しながら実践の場で丁寧に伝えていく

座学、同行での現場実践、また座学…というサイクルがベースの育成スタイル。

ある程度レベルが上がって来たら、バックでサポートをしながらその人にメインでやらせてみる。

 

実践経験を通じてでないと得られないことは多い。なので、「患者さんから学ぶ」という考え方に立って実践してもらい、その際のサポートやバックアップを提供するのが管理者側の役割だと考えている。

 

取材先:

板橋区医師会訪問看護ステーション

〒175-0082 板橋区高島平2-32-2-107

TEL.03-3931-4774

http://www.itb-zaitaku.com/station/business/index.php

取材日:2016.9.26

更新日:2016年10月12日


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