医療・介護から看取りを支える人たちのインタビュー ”ひと”

インタビュー“ひと”
看取りに取り組むフロントランナーたち - Human Inteview -

「シームレスな社会参加」で豊かな終末期を支援…大田区「みま~も」の地域包括支援センターの枠を超えた取り組み(2)

Profile

さわやかサポート入新井
澤登  久雄施設長

社会福祉士、介護支援専門員、介護福祉士。 おおた高齢者見守りネットワーク発起人。

手を差し伸べる大切さを知ってほしい

――「「みま~も」」では、「「みま~も」サポーター」として住民がボランティアに参加したり、協賛企業が街づくりにかかわったりしています。このような活動が「シームレスなつながりづくり」に与える効果はいかがですか。

 

「みま~も」は発足から、8年たっています。発足当初、元気だったサポーターが今、たとえば要介護状態になっていたり、ご主人が要介護状態になって「今までは参加していたけどこれからは介護に専念しなきゃいけない」といって夫婦そろって孤立してしまうような状況になっているわけです。

 

でもその人たちは、適切な時期に、または、適切な時期よりももっと早いうちに、私たち専門職と「じゃあこういうふうにしよう」「じゃああそこにつなげよう」と、介護のサービスも受けながら地域で暮らしています。

 

たとえば、サポーターで活動していた人でも、今までは普通に会話していたのにだんだんついてこれなくなる人たちがでてくるわけです。そういうのってわかるじゃないですか。そういうときに適切な場所やサービスにつなげていくとか。

 

多くの包括支援センターや行政がやっていることは、住民の人たちに「(近隣の人たちの異変への)気づきをください」っていうお願いをしているだけなんです。

でも、僕たちが地域に出て気づいたことは、「私たちに連絡ください」っていうお願いだけではやっぱり機能しないってことです。

 

そして、「気づきをください」って訴えている相手であるその人たち自身も実はいろいろな面で私たち専門職を必要としている人たちなのです。予備軍なわけですよ。

だから、お願いをしつつも、今はなんとか地域とのつながりがあるその人たち自身についても、できる限りそういったつながりのある関係を長く続けていくためにどうするのかということを考えています。その人たち自身のことを考えることも提供しないと展開していかないと思うのです。

 

 

――自分が参加する側だとして、「ボランティアなどに参加していれば自分自身や自分の親のことを皆さんに相談しやすくなる」というのは分かります。でもたとえば、参加したところから自分のマンションに帰ってくる。周りはそういった活動とは関係のない住民の皆さんが暮らしているわけですけれど、その人たちの様子を伺うことができるのかとか、その人たちと会話できるのか、そういった人たちの異常や異変に気がつくことができるのか、となると、とてもハードルが高いと思うのですが…。

 

そうですね。

でも、地域の一人ひとりが「地域とのつながりって大事だよ、つながっておこうよ」というふうに感じている。そういった感覚の人たちが段々と増えていけば。

たとえばそこのマンションの中でもそういう住民の方たちの割合が高くなっていけば、たとえば何か困っている人がいれば「ドアを開けよう」って思うかもしれない。その困っている人自身も「助けて」って言えるかもしれない。

 

医療が必要になったり要介護状態になった時に個別対応って必要ですよね。そこが本来専門職の役割かもしれないのですけれど、でも、それだけやっていても一本釣りですよね。

 

地域としての、広い面としての、影響を考えると、自分自身でも「『助けて』って言うことが大事だよな」と認識してもらうことと、さらに「『助けて』って言えない人たちには手を差し伸べよう」っていう人たちがいっぱい町中に増えていくこと。

それが僕は「大事なんだろうな」と。

 

これは時間かかるんですよ(笑)。

「みま~も」も出来てから8年になりますが、全うちの包括のエリアの区民を全員網羅しているかっていったらしていない。だけど変わっては来ていますよ。

やっぱり地域にしかできない

――首都圏の他の地域包括支援センターでこういった活動が拡がりにくい原因はなにでしょうか? 成果が見えづらいことであるからでしょうか?

 

地域包括支援センター、いつもは包括って呼んでいますが、これは自治体からの委託なので、委託料、つまり税金をもらってやっているわけです。ですから、自治体としては「その包括がきちんと運営されているのか」という評価をしなくてはいけない。

評価ですから、見えないものでは評価ができない。だから「数」になるのです。たとえば、包括が行うべき地域の実態把握っていう課題があるわけですが、「一軒一軒のお宅への訪問で、何軒行きましたか?」ということが問われる。そういった数でしかないんですよね。私たちの取組みのような数ではあらわしにくいものに向かっていく包括がまだまだ少ないのは、そういったこともあるのだと思います。

 

ただ、自治体からの評価が上がっても委託料が上がるかというと別に上がりませんからね(笑)。だから、びりから2番目くらいでいいのかな。だけど、住民の人たちに「大事な場所だよ」って思ってもらうほうがいいって。そう吹っ切れないと動けないですね。

 

特に、こういう都市部では住民が孤立しやすい。医療介護の人たちだけじゃなくて住民を含めたネットワークをつくっていく、そこには企業も参画してもらう、そういうことをつくっていかないと孤立の急増は避けがたいと考えています。

60歳、70歳になったときに、「この地域の中で暮らし続けたい」「最期はここで死にたい」といった自己選択のための選択肢を作っていくためにこういった街づくりも大事なのかなと思います。

 

――住民が自分自身も含めたネットワーク作りが大切なのですね。

 

年間パンフレットに、これだけは8年間変わらず載せている文章があります。

「みま~も」を始めた当時はまだ世の中に「地域包括ケアシステム」という言葉はありませんでした。そういうなかで、まだどこもやっていないこういう活動するときに、どの人にも伝わるようなものを文章としてほしくて、親睦のあった弁護士さんに書いてもらいました。

 

今、社会の中で弱い立場、どうにも抜けられないつらい状態に押し込められている人たちがいて、この人たちには積極的に手を差し伸べなければこの人たちって抜け出すことができないわけですね。

その人たちに手を差し伸べることの重要性を書いていて。

手を差し伸べるときっていうのは、プライバシーの侵害とか保護、自己決定とか自己責任など小難しいことは飛ぶって書いてあるのです。

 

こういうことをどんどん伝え合うこと。手を差し伸べるっていう行為自体の持つ難しさというか、やっぱり手が届く距離の人にしか手を差し伸べられないですよね。

手の届く距離。結局、手を差し伸べることって地域でしかできないんですよね。

 

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更新日:2016年04月12日


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