医療・介護から看取りを支える人たちのインタビュー ”ひと”

インタビュー“ひと”
看取りに取り組むフロントランナーたち - Human Inteview -

営利だけでは乗り越えられない時代に…【2】

Profile

株式会社ウッディ 代表取締役
木戸 恵子看護師

2008年 訪問看護ステーション はーと設立 2013年 ホームホスピス はーとの家 金町設立 2014年 機能強化型訪問看護ステーションの指定を受ける ・ 介護のみのりはーとカフェ設立

多分野を包含する地域のリーダーが必要とされている

木戸:

金町地区ではこんなことをしていますが、規模的に私自身が葛飾のあちらこちらの地区で現場活動ができるわけではないですから、年に1度、もしくは2度ぐらいは大きなシンポジウムをしながら、訪問看護のステーションの存在を知っていただく働きをしたり、あとは皆さんが地域で助けあって生きていくっていうことを念頭に置いて生活できるような働きかけをしたりしています。

それに、現在営利だけで経営をされているところも数箇所あるかもしれないけれども、「それでは乗り越えられない時代になってきてしまうから」といった考えを伝えていくことで仲間づくりをしたりとか。

 

そういったことをしながら、最終的には最初に申し上げた「様々な分野を包含したリーダー的な存在になれれば…」と思っているところです。実際、地域をまとめてくれるリーダーが私たちのような活動のなかから生まれてくるのか、行政の方になるのか、地域包括支援センターになるのか…今はまったくわからないですが、いずれにしても必要であること自体は間違いないと感じております。

ちなみに、地域包括支援センターの存在は住民の方にとって本当に重要なものとなっていらっしゃいます。。そこで働かれておられる皆さんが、住民にとって本当に大きな役割を担っていらっしゃるのですが、介護保険を使わない方々には地域包括支援センターの存在自体が見えていらっしゃらないのだと思います。

 

編集部:

行政の方が地域のリーダーになる可能性というのは、実際どういった方がそうなられるイメージなのでしょうか?

 

木戸:

保健師さんとか、区役所の職員さんとかでしょうか。でも、保健所の保健師さんはそうに人数がいるわけではないし、お一人お一人が業務でフル稼働されていると思います。私が区役所でなにか一つをお願いする場合でも、4箇所も5箇所もまわされてしまうような構造もあってちょっと分かりにくいのです。

分からないところをどのように分かりやすくできるのかっていうところで、「お互いがお互いの問題を解決していけるような関係が構築できないかな」と考えています。

一つ一つの事柄が分かりにくいのは、もうこれは世の中がつくってしまったもので歯向かうこともできないのですが、「それらがなんとか整理されて分かりやすくなるような、住みやすい地域づくりができるといい」と考えています。

以上でございます。

在宅看取りの取組みについて

編集部:

運営されている訪問看護ステーションの在宅看取り数は月に何件ぐらいありますか?

 

木戸:

月だと10件前後なのですが、年間で120は超えます。これはかなり数としては大きいと思います。

ちなみに、全国で8700箇所、訪問看護ステーションがありまして、そのうち年間50件以上の在宅看取りをされているステーションは、全体の0.6パーセントもないのです。それ以上の細かいデータはでていないので正確なところは分かりませんが、100件を超えるというところはめったにないのです。

それに、在宅看取りといっても粗雑な看取りではだめだと思っています。ちゃんとその人らしく、その人が選んだ看取られ方ができての満足だと思っています。ですので、私たちもそういったことが実現できるよう、日々努力をしています。

 

編集部:

利用者の方たちは、がんが多いのでしょうか?

 

木戸:

在宅看取りとなりますと老衰、もしくはがんの看取りが中心になります。他に慢性疾患もおられますが、そういった方の場合には突然の急変で病院に行かれて、そこでお亡くなりになる方が多いように感じます。

いまのところ在宅看取りは老衰またはがんで「もう長く生きられないことがわかっていての…」というケースが中心だと思います。

 

編集部:

がんの場合、どういうところに力をいれてケアをされていらっしゃいますか? やはり緩和ケアとかでしょうか?

 

木戸:

緩和ケアは、これは必須だと思います。在宅で看取る必須条件は痛みが無いことなのです。ですので、緩和ケアはもう絶対に持ちあわせていなくてはならないアイテムです。ですから、そこに敢えて力をいれているということではないのです。それはもうできて当然なので。

私はそれよりも精神面ですね。本人が「無念だ」と思わないように。また、ご家族の方が「あのときに検査をしていればよかった…」とか、そういう気持ちにならなくて済むように…。病気や寿命を自然なものとして受け入れられるような気持になっていただくことを重視しています。人生のどこかの曲がり角で病気に出会ってしまって、「その病気を持ちながらも、でも精一杯生きたよね」っていうことで、最終的にしっかりと痛みがとれて…。

「安らかに眠るようなかたちで天に登っていったことが不幸中の幸い」と。そんなふうにご家族が思えるような、そういうケアを心がけています。

 

編集部:

なるほど。精神面なのですね。

在宅緩和ケアをめぐる医療側の事情

※画像はイメージです。

編集部:

ところで、その必須アイテムである緩和ケアのほうでは、なにか全体的な課題とかはあるのでしょうか? 問題点とか。

 

木戸:

ある程度痛みがとれる技術や知識を持つお医者さまが少ないのです。ですので、地域にそういった先生がたがおられない場合は、その地域の方々はかなり痛みと戦っていると思います。

私がチームとして組んでいる先生がたは、日本でも有数なホスピスケアの先生なので私たちは恵まれています。ですが、先生1人でもそれは無理なのです。毎日毎日「薬が効き過ぎてはいないかな?」「足りないかな?」 痛みだけではなくて、「その薬が効いたから眠くなっちゃった」とか、「ご飯が食べられなくなっちゃった」とか、そういったところにも目配せしながら中間地点で状況を的確に拾っていくナースの力というのはとても重要なのです。こういった連携のところが課題でしょうか。

 

ある程度の力を持っている先生が居られれば、その先生が看護師に指示したことを、そして看護師が受けた指示をきちんと受け止められて実行できて、また先生にお返しできて。そしてこれらの流れが互いの信頼の上に成り立っている。こういったチームとしての連携が大切です。

家族が「楽になったようだ」と言っていて、看護師さんがそこをそのまま先生に「楽になったようですよ」と伝えても、的確に状況を捉えるナースの力や、そのナースの力量に対するお医者様からの信頼が無ければ、「本当に楽になったのかね」と先生が自らの足でまた見にいって確認するといったことになります。そういう手間がいちいち発生するようだと、これはチームではないと思うのです。

私たちの場合は、既に信頼関係ができていて各々の立場を理解している、そういった関係の中で仕事をさせていただいていますので、私自身は緩和医療にはあまり難しさを関しておりません。

 

編集部:

緩和ケアに詳しい、技術を持った先生が少ない、というのは?

 

木戸:

先生たちにとっても、在宅での麻薬の取り扱いというところに一つ壁があるのかもしれません。麻薬を処方されますと、その後の経過を丹念に繰り返し観ていかなくてはいけないのですが、やはり往診とご自分の開業医院での外来の狭間であまり時間が取れない。例えば「週1回午後の診療がないときだけ往診にいくよ」といったスタイルの先生だと、細かいところまで観ていくのは難しいのかもしれません。

また、緩和の次にくるのは看取りの可能性の高まりで、24時間対応できるようにしていなければいけないという負担もあります。先生たちにとってはそれがストレスになってしまいがちでして、お医者様の間でなかなか在宅医療への関わりが広がっていかないひとつの理由になっているのだと思います。

 

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更新日:2016年04月14日


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