医療・介護から看取りを支える人たちのインタビュー ”ひと”

インタビュー“ひと”
看取りに取り組むフロントランナーたち - Human Inteview -

介護保険の枠にしばられないオーダーメイドの終末期サービス(2)

Profile

株式会社ホスピタリティワン
高丸 慶業界人

株式会社ホスピタリティ・ワン(東京都港区)代表取締役 おくりびとアカデミー校長 訪問看護支援協会代表理事 高野山大学客員准教授

「一泊二日」の文化を広げる

自社運営の訪問看護St「ホスピタリティ・ワン」を説明する高丸氏

――具体的にホスピタリティ・ワンではどのようなサービスを?

 

大きく分けて3つのサービスがあります。

入院中の利用者の一時帰宅や家族旅行等に付き添う「一時外出への付き添い看護」、入院中に在宅療養への支援体制を整える「在宅療養『つなぎ役』訪問看護サポート」、在宅での看取りをサポートする「24時間在宅サポート」の3つです。

特に「一時外出への付き添い看護」は、今一番需要が多く、これからも伸ばしていこうと考えているサービスです。

 

病院でほとんどの人が亡くなる時代が続いて久しい。いきなり「在宅看取りをしましょう」と言われても家族や本人にとってかなりハードルが高いのが実際です。まず第一歩となるところで、「病院から一泊二日で自宅に戻る」という文化を定着させ、そこから在宅へつなげていく。

団塊の世代が後期高齢者になる2025年が本番で、その時までにトップラインの部分をおさえ、広く展開していくために必要なエビデンスとなるデータを整えているところです。

 

「コストのかかる終末期医療を病院から在宅にシフトする」。医療費抑制を進める国にとってここがまさしく今一番課題を抱えているところです。医療経済の観点と、個々の当事者であるご本人・ご家族の納得や満足の観点、バランスのとれた形になるよう、ともにシステムをつくっていければ、と考えています。

 

――在宅での看取りはご遺族のケアという意味でどのような効果が?

 

現在はほとんどの方が病院で亡くなっている時代ですが、他方で多くの方が「最期は家で過ごしたい」という希望をもっています。また、「お父さんはお父さんのままで看取ってあげたい」という家族の想いがあります。

 

病院にいると、どうしてもご本人は気弱になってしまい常に死を考えてしまっていたり、周囲から病人として扱われることで自尊心が保ちにくくなったり、逆にそれに反発したり、いずれにしろ緊張感やストレスがあるなかで過ごされていることが多い。

 

病院から家に帰ったあとの顔つきの変化は明確に分かります。そこをぜひご家族に見ていただきたいなと思います。見ていただいたあとで、「帰してよかったな」と思うところと、「そのまま在宅で看取れるかどうか」の判断をしていただけたらいいのかなと。

病院と全く違ういきいきとした様子をご覧いただいた上で判断してほしい

外泊中の患者が訪問看護を利用することで退院が促進されると思う 約80%

 

 

 

 

 

 

 

 

――在宅での終末期療養に関して、なにか印象的なエピソードがありますか?

 

ある末期がんで余命2週間ほどのおじいちゃんがいらっしゃいました。「今のうちしか帰れないから」ということでの一時外出の付き添いで、僕が手掛けたケースがありました。

 

朝10時に病院を出て、10時半ぐらいにお家について、奥さんや子供さん、お孫さんたちがいて「おじいちゃんおかえり」と迎えられて。

家へ着くまでは「病院でも寝たきりだったから家でも寝たきりだろう」とご本人はおっしゃっていたのですが、家に帰った瞬間に元気になられて。結局、一度もベッドに横にならずに。リクライニングができる車椅子がありまして、ずっとそこに座ったまま。家を出る3時過ぎまでずっと座っていらっしゃって。

 

ご自分が吹き込んでいたテープをみなさんに聞いてもらって。遺言を残したり、自分の仕事の書類を息子さんたちに託したり。

余命2週間で嚥下機能が落ちてくるので呑み込めず、病院では「もう食べちゃダメだよ」と言われていたのですが、噛むだけというかたちで。僕たち看護師が吸引機をもっているので「何かあれば吸引しましょう」ということで。

お肉が好きだった方なので、ご家族がお肉を買ってこられて、それを咀嚼だけして肉汁だけ飲んでもらって。そしてみなさんで写真も撮って……。

 

――数時間の自宅滞在でもさまざまなことができるのですね。

 

一時外出として帰宅されて、病院と全く違ういきいきとした様子をご覧いただいて、ご家族が家で最期まで見る決意をされるケースもあります。

 

たとえば、ずっと入院されていたのですが、ご自宅が横浜にある方でした。一時外出先としてご自宅に戻られた際に、「もう病院に戻したくない」となって、そのまま地域の訪問看護ステーションやケアマネにご自宅に来ていただいて、その場で会議をして翌日から介護保険を使えるようにいたしました。病院にも電話して「このまま退院します」と。そのまま2週間くらいご自宅で過ごしてそのまま亡くなりました。

 

もちろん在宅での看取りは、メリットだけではなくデメリットもあります。そこをちゃんと伝えて選択していただくことも僕たちの役目だと思っています。

さまざまな背景がある「痛み」に多職種連携で対応

高野山大学主催の高野山医療フォーラムにも協賛

――介護・医療分野以外での多職種との連携は、どのようにされていますか?

 

あるおじいちゃんのケースですが、すでにお墓を購入されていてそのお墓を「見に行きたい」と。そこで付き添ってお墓参りに行って帰ってきたら、あんまり元気じゃない。

家族が離れている間に「どうしたの?」と聞いたら、「実は俺は天国に行きたいんだ」と。「キリスト教に改宗したい」とおっしゃったのです。すぐに、ご家族に相談して、牧師さんにきてもらって 最期はキリスト教の協会で葬儀をあげられました。

 

緩和ケアにおいて重要な概念である『トータルペイン(全人的苦痛)』では、人の痛みは『体』『心』『家族』『スピリチュアル』の4つの側面があります。

たとえば、『体が痛い』と訴えるおばあさんにモルヒネを打っても治らない。ご本人は本当に痛いと思ってらっしゃるのだけれど、実はその背景には、嫁姑問題だったり、お金の問題だったり、自分のお墓の問題だったり、宗教観だったり…、本当にさまざまな問題がある。

 

患者さんに最初にこういった深い話を聞くことの多い我々看護師が、ハブの役割となるべきだと思います。悩みを分解し、『体』の部分は我々医療者で、そのほかは、それぞれ適したその道のプロにつなげていく。

 

100点満点の看取りはない。『ああしたらよかったかな』という想いは、ご家族の皆さんが必ず抱く。でも、「これはできたね」というものを1つでも2つでも増やしてもらえたら、と思います。

 

(続く)

 

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更新日:2016年04月15日


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