医療・介護から看取りを支える人たちのインタビュー ”ひと”

インタビュー“ひと”
看取りを支える人たち - Human Inteview -

「看取り」をめぐる現場の視座【2】

Profile


山田 洋子ケアマネジャー

在宅のお看取りも含め、経験豊富なケアマネージャー。 介護や医療の多数の専門職の尊敬を集める存在。

経済的余裕があるがゆえの在宅という選択も

◆山田

あとは逆に、これも在宅の典型的なパターンの1つですが、「余裕があるからこそなおさら在宅を決断する」っていうものもありますね。

 

2年前に見送った方が、お子さんがいないご夫婦二人暮らしでした。奥様が、今から8年ぐらい前に倒れたのです。私が4年受け持ってましたから、その2年後に亡くなった計算です。

 

要介護5で、全く寝たきりです。朝昼晩ヘルパーさんを入れて、訪問のお医者さん、訪問看護師さんもいろいろ使って、十何万介護保険でカバーできない分が出るわけですよ。自費10割負担が。でもご主人が「絶対に病院で死なせたくない」「うちで僕が看る」と。このご主人の方も糖尿を抱えててひどいんです。ご主人自身は今年他界されましたけれども、気力で持っていたと思います。

このケースは、経済的に豊かだから「どんなにオーバーしても必要なものができる」という意味の在宅です。

 

奥様は最終的には2年前の寒いときに亡くなられました。2月に亡くなられたのですけれども、金曜日の夜に救急搬送されて土曜日に亡くなりました。だから、ご主人は「あっという間だった」とおっしゃる。それで「それは奥さんが『これ以上はもういいよ』っていうご主人に対しての感謝の気持ちですよ。安心して召されたと思いますよ」って伝えました。「僕は何も悔いがない。一生懸命やったから」と納得されてました。

「周りはみんな分かってるし。そういった天国へ召された方もいらっしゃいますし。だからその奥さんは幸せだったと思います。」と伝えて…。

 

ずっとおうちで支えるんだと。そういう人もいます。奥さんのためにはどんなことをしても、お金が掛かってもかまわない、そういう余裕がありましたから。

こういうケースは極めてまれですけどね。

 

大半のケースは、本当は療養型病院がいいのだけれども経済的に難しいから…というところで、何とか在宅でっていうパターンです。

でも、家計は豊かであっても家族の気持ちがないとやはり在宅は難しいですね。

実際じゃあ在宅でって、家族の負担は本当大きいですよね。これは家族全員がなんとか支えていこうと、そういう気持ちにならないと在宅は難しいです。

 

これは昨年脳梗塞で倒れられた方、このご家庭は経済的に余裕があるわけです。体の状態としてはまだまだおうちで大丈夫なのですけれども、別に暮らされてるご子息さんと娘さんが父親に対してとても反発があって、絶対面倒なんか見たくないと。それで結局、病院へ入れちゃったわけです。そういった例もあります。家計がどんなに豊かでも。

 

皆さんで集まってどうするかという相談をしている時も、私の目の前で亡くなった後の遺産の話が出てました。「私の証人になってね」と頼まれるわけです(笑)

兄弟でけんかが始まって、「僕はお金なんか要らないよ」ってご子息さんがおっしゃって。それで娘さんが「今の言葉ホントよね。ケアマネさん証人ね。」って。「いや、私はそういうことはタッチできませんから」とお答えしましたが、お母さんはどんなに情けない思いかということですよね。そういった例もあります。

 

やっぱり、奥さんにしたら不仲であったご主人であっても、今はこうやって病に倒れておうちにいたいと。まだまだ十分在宅で看られる状態の人でした。でも、それには家族がお母さんを休ませてあげる時間を作るとか、そういう心の支えとかがないと無理なので。

私の方からそういってお願いをしたのですが「あなたはうちの父を知らないからだ」と。お父さんへの憎しみがあるわけです。

 

でもやっぱりとお願いしたのは「今の現実のお父さんを受け入れてください」と。「目の前でご病気のお父さんを」と思うのですが、もうやはり嫌だと。その思いだけで、在宅は成り立たなかった…そういった例もあります。

家族の介護力も家計も共に厳しい場合の行く末…

編集部:

実際には協力しようにも仕事の関係とか、今、介護離職なんて結構言われているのですけれど、気持ちとしては在宅で支えたくても、協力したくてもなかなか現実にはできないとか、家族がそもそも人数が少なくて体制が組めないとかそういったことが多いわけですね?

 

◆山田

そうです。ご家族の介護力が不足していることは多いですね。

 

編集部:

しかし、経済的には厳しいので、「いわゆる療養型病院に」というのは家計的に難しい場合が結構多いということでしょうか。

 

◆山田

やっぱり家計です。本当に家計がカギになります。

 

編集部:

こういった在宅で支えるにはご家族の介護力が不足、療養型病院を利用するには家計的に無理といった場合って、一般的にはどういう展開になるんでしょうか。

 

◆山田

いやあ、だから。特にここ数年そういったケースが多くて、それで、以前ですと病院に終末までいられましたよね。今もう病院は、例えば長期入院のイメージがある脳梗塞で倒れても平均入院期間が2か月なんですね。出てくださいと。

家族はそこで直面するわけですよ。選択肢はないわけですよね。それで病院側ではいろんなところを紹介する。病院内のソーシャルワーカーも「ここもあります」「あれもあります」と。

 

家族の方は、勝手といえば勝手なのですけれども、ちゃんと自分のうちで看られないのに「ちゃんとしてくれる所でないと」って言うわけです。

でも、はっきり言ってマンツーマンの所なんていうのは人件費の問題があったりと現実的には無理なので、正直言ってどこに行ってもそんなに変わらないと思うのですね。

望むのは、そこの職員のレベルですね。教育がちゃんとしてるとか。それにしたって、やはり実際には手薄になります。

 

ですから、そういう所に入ったために逆に機能が低下してしまった。結局、寝たきりになってしまうと動かない。だから、どんどん心身の機能が低下していくわけです。でも、これはそこまでを今利用者さんのご家族は望まれます。「こういう機能回復もやってほしい」とか。

でも、そこまでは無理ですね。現実、通常の料金の施設でそこまでの対応はできない。

 

例えば、老健。

これは3か月単位です。3か月で出なければならない。老健なんかも一応目的には機能回復しての在宅復帰が入っていますが、実態は機能回復という面ではそれほど期待できない。全く機能回復のための病院っていうのはリハビリ病院ぐらいで、普通はそういった期待はできません。

一般の特養であったりとか療養型の病院とか、あと、有料老人ホームなんかでもそういう機能回復が目的の所ではないので、そんなに人員も職員も対応はできません。ご利用者様の生活は結局みんな決まったことの繰り返しになります。朝起きて、食事があって、昼があって、あとお風呂とか。それから寝たきりの人があればおむつ交換があったりとか。

 

「積極的に外へ行きましょう」とか、体を動かしたりとか、そういうことは多くは望めないですね。そういうことをやっていると、人員も足りませんし。

 

ちなみに、老健は、基本は「おうちに帰りますよ」という目的の所なので、ワンクールがだいたい3か月なんです。そこで例えば機能訓練士とかがいてもそれは毎日のものではないのです。

また、老健というのは、例えば今回の例のように身体機能が慢性的に落ちていてあまり回復が見込めないという人は絶対入れません。しばらく療養すれば自然に回復していくというもっと身体的にレベルの高い人しか老健は入れません。

終末期の高齢者医療というのとは、目的が全然違いますね。

 

特養は、入りたがっている方は多いですがなかなか入れません。特養はポイント制なので、申し込み順ではありません。区によっても違いますけれども、待っているだけではダメで、かつ、なかなか入れないのが通常です。

 

特養はどうして人気があるのかというと、やはり料金の低さです。介護保険が使えて、自己負担は絶対10万まではいかないですからね。まず。

だから特養へ入るために老健を転々として待機するというパターンが生まれます。

 

施設や病院という選択は、特養を除けばどういう施設を選んだとしてもそれなりにお金がかかるということになります。

だからその点で難しいと、やむを得ず自宅に帰るしかないですね。そういう方もいます。だって入れないわけだから、経済力がないと。

 

あとはお金を何とかして、それこそ必死でお金払ってる人もいます。自分の家では無理なので…ということで。

 

 

参考:ケアマネジャーの仕事に関する基本的知識

 

 

画像引用元:第1回介護支援専門員(ケアマネジャー)の資質向上と今後のあり方に関する検討会資料

参考:実際の在宅向けケアプランで作成される居宅サービス計画書例

その一

 

その2

画像引用元:独立行政法人福祉医療機構 WAM NET 「ケアマネジャーのしごとガイド」

 

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更新日:2016年04月15日


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