医療・介護から看取りを支える人たちのインタビュー ”ひと”

インタビュー“ひと”
看取りに取り組むフロントランナーたち - Human Inteview -

訪問看護ステーションとホスピスの連携【2】

Profile

カイロス・アンド・カンパニー株式会社代表取締役社長
高橋 正業界人

カイロス・アンド・カンパニー株式会社(小田原市) ナースコール株式会社(名古屋市)

訪問看護師や家族の選択肢の幅を広げる

家族用のソファーとベッドサイドは互いに見通せるよう配置

 そのような現状に対し、訪問看護師を支えられるようにと考えたのが「ファミリー・ホスピス鴨宮ハウス」だったという。

 

「バーンアウトしてしまう訪問看護師は、体力面もありますが、それよりもメンタル面での問題が原因であることが多い。」

「一人ひとりの看取りに対してできなかったことへの後悔、在宅の限界の積み重ねですね。敗北感に苛まれている看護師の様子を横で見ていて実感してきました。」

 

「家族がどうしても病院へ、施設へ、とおっしゃったら訪問看護師は抵抗できません。実際、訪問看護のなかで、自宅で看取るのは2割か3割です。残りの7割は病院や施設へ送っている。」

「例えそのような状況になったとしても、それまで関わってきた訪問看護師から切り離される病院やほかの施設ではなく、横の連携が密にとれた支援が引き続き行える『鴨宮ハウス』という選択肢と安心感を本人や家族に提供できるなかで訪問看護を続けてもらえれば…と、考えたのです」

 

 また、家族の負担を支えられる場所という目的もある。

 

「自宅での介護、まして看取りは、家族への負担が大きいのは現実です。最期の1か月は眠れないし、肉体的・身体的な負担はとても大きい。しまいには兄弟喧嘩になり、親子喧嘩になり、親戚も巻き込んで家族の関係性までも壊れてしまうケースもある。」

「だから、その前の段階で手を打つ。たとえば、1週間のうち6日このような施設でみてもらって、残りの1日を家で過ごす。結果的に看取りの場所が施設だったり家だったりするわけですが、それでも僕はご家族が見送ってあげたということになると思います。」

 

 そして「家族の関係性がみるみる良好になったなかで良いお看取りができる効果」も実感しているという。

 

「家族の肉体的・時間的拘束を軽減し、精神的な余裕を持ってもらうなかで、本来ご家族の一番の役割であるメンタル面でご本人を支える、ということをしていただけるようになるんですね。家では疲れ切ってネグレクト気味だったご家族が、今では午前と午後に毎日のように会いに来られたり」

 

「先日も、入居中の女性のところに、入院中には一度も来なかったお孫さんが来てくださって。お孫さんは隣のベッドで寝転んでマンガを読んでいて、別に会話をしているわけではないんですが、そのときのご本人の様子がやはりいつもと明らかに違うんですね。家にいるように存在を確認できるだけで落ち着くし、うれしいと。」

「メンタル面での看護師とご家族の負担をとってあげられる場所になっているかなと。在宅医療を支えるうえで選択肢があることがとても大切だと思います」

 

 家族や本人、そして支える専門職にとっても、「在宅が限界になれば施設入所」という担保があるのは重要なポイントであろう。「在宅」と「施設」が相互にうまく組み合わさることで、安心した終末期を迎えられる介護システムの構築を目指している。

本人や家族の「自己責任」がベース

高橋さん近影

「病院では、たとえばいったん経管栄養になった人に、『もう一度一食でも食べてもらおう』と経管栄養を外し手間暇を掛ける…というのは目指しにくい構造があります。」

「病院では経管栄養を経口摂取に切り替えることについてリスク評価が先行しがちです。お風呂もそうです。手間もかかりますし入浴中に事故も多いので病院では身体を拭くだけ。」

「でも、口から食べたいしお風呂にも入りたいですよね。そんな『当たり前』な希望をできるだけ叶えられる。それこそがここの価値だと思っています」

 

 食事や入浴等のほかに、同ホスピスで「最期にやりたいこと」として希望が多いのが「外出」で行き先は「お墓参り」が多いという。

 

「『最期にお墓参りをしたい』とおっしゃる方が多いですね。看護職と介護職が連携して、民間救急を手配したり救急で受けいれてくれそうなその地域の病院に事前に連絡をしておいたりと手を尽くして、できるだけ叶えて差し上げられるよう努力しています」

 

 ただ、それらの踏み込んだケアをできるのは本人や家族の「自己責任」という基礎があるからこそだという。

 

「我々は『職業家族』として専門性の知識とスキルをもって横から支える最大限の努力をしますし、包括的な責任は常にご家族と同じようにもってかかわります。そしてここではご自宅のように自由に過ごしていただきたいと話します。」

「しかし、自由と自己責任は表裏一体です。我々の最大限の努力を前提としても、経口摂取に挑戦することや、『お墓参り』に挑戦することには、それに伴う避けがたいリスクはあるわけです。そういったことも、入居のときに必ず確認させていただきます。」

「それがあるからこそわれわれは踏み込んだケアができますし、人生を最期まで自分らしく生きていただくことをともに目指すことができるのです」

アドバンスケアプランニングの啓蒙活動を

がんサロンはデイサービス用のフロアで開催

 今後の大きな課題の一つとして「『アドバンスケアプランニング』をできるだけ初期の段階の方たちに向けて啓蒙していくこと」と話す。

 

現状は、「ここにご紹介いただく段階ではあと数週間単位というケースが多い。その傾向は医療が進み、治療方法が多様に充実する中で強くなっている」という。

「たとえば、今は抗がん剤の薬種が増えて完治を目指した抗がん剤投与だけではなく、進行を遅らせたりADLを維持するためのものなど多くあり、死期の直前まで化学療法が続けられるといったケースが増えています。」

「ホスピスにいらっしゃるのがそこからなので、すごくタイミングとしては遅くなっていますね。終末期へのギアチェンジのタイミングが、より難しい状況になっていると感じています」

 

 同社では月に1回、ガンの専門医や看護師、管理栄養士らを講師としてガンサロンを開催しアドバンスケアプランニングの意味や重要性を呼びかけているが、これからは最初にがん診断を下すがん診療の拠点病院とも連携しながら啓蒙していきたいという。

 

前へ<<

更新日:2016年02月29日


このインタビューを読んで良かったですか?
良かった 良かった

8

訪問看護ステーションとホスピスの連携【2】

この記事が気に入ったら「いいね!」しよう

訪問看護ステーションとホスピスの連携【2】

訪問看護ステーションとホスピスの連携【2】

この記事が気に入ったら
「いいね!」しよう

訪問看護ステーションとホスピスの連携【2】

大切なひとと考える『これからハンドブック』

pagetop