看取りを知る

権利保護・意思伝達手段

をとると心や体の機能低下を避けることはできません。最終的には寝たきりとなる場合や、意識が混濁しほとんど会話ができなくなる可能性も高まります。
しかし、日本を含む先進国ではひとりひとりが充分な判断をし、意思表示できることが基本的な前提となってさまざまなルールが決められています。
そこで、会話や意思表示が難しくなってしまう高齢者の現実を踏まえ、ご本人の希望や意思をくみとり、幸せに暮らしていただくためにいくつもの工夫が生み出されてきました。その中には法的な制度になっているものもあれば、民間企業のアクティビティ、さらには人生の考え方をとらえなおすお手伝いもあります。

こちらのページには、それらを総覧する形で整理しました。実際にご家族やご自分のおかれた状況に応じて「どういった組み合わせでなにを活用するのが適切か」をご検討ください。

意思や希望の伝達

本人が自分でものごとを決められなくなったり、思ったことをスムーズに口に出せなったりする前に、信頼のおけるご家族や第三者があらかじめご本人の希望を聞いておいたり、知っておくことが重要になります。
ですが、介護、死後のご葬儀に財産分与といった話題はご家族でもなかなか踏み込みにくいものです。そのため、人生の最後を考えるきっかけになるアイテムや、やり取りを推し進めやすい考え方などが生まれています。このページでは、そのいくつかをご紹介します。

・エンディングノート 遺言と違って法的な拘束力は持ちませんが、普通の暮らしの中でなかなか触れにくい死に関することも含めて、ご自身の想いや考えを近親者に伝えるツールとして注目されています。ただ、実際には手に取ったほとんどの方が1~2ページ以上書くことなく挫折しているようです。
エンディングノートを有効利用していただくためにも、単に項目を埋めるためだけではなく、ご家族と対話するきっかけとしても活用することをお勧めします。

・リビング・ウィル
直訳すると「生前意思」と呼ばれるリビング・ウィルですが、実際は、ご本人の意思を尊重して無理な延命治療を行わない「尊厳死」と深く関係して使われています。リビング・ウィルをあらかじめ遺される方は、延命治療の打ち切りについて記した書面である「事前指示書」も意味として含めていることが多くあります。

しかし、延命治療の打ち切りは下手をすると刑法上の犯罪になってしまうため、医師も慎重にならざるを得ません。また、本人が言葉で日ごろから「延命治療は受けたくないのよ」と家族へ伝えていたとしても、いざ救急病院へ運ばれた段になると家族は「本当に今でも延命治療を止めたいのだろうか?」と万が一にも誤った判断となってしまうことをおそれます。ご家族や医療職が本人の意思であると確信をもって判断できるよう、書類で「無理な延命治療は受けたくない」という意思を明確にしておくのがリビング・ウィルと言えるでしょう。

・アドバンス・ケア・プランニング
「患者さんやご家族が今後どういうケアや治療を受けていきたいかということを、あらかじめ皆で相談していくこと」を指す言葉で、医療の世界から出てきた概念です。
これは「延命治療を行うのかなど、治療の方針をきちんと話し合っておく」ということが中心となるテーマでもあるので、上述のリビング・ウィルと似た考え方かもしれません。
状況の推移で本人も家族も考えがどんどん変わっていくことから、継続的な活動として捉えられています。

法的な制度

介護からお看取り、そしてご逝去後…と本人の意思と権利を全うするために、さまざまな制度や契約が用意されています。初めて経験されるご家族にはとっつきにくい、難しいと思われるかもしれません。しかし、それぞれが実際の必要の中から生まれた仕組みですから、こちらをご覧いただきながら状況や希望に合わせて適切に選び活用していただければと思います。

・遺言


遺言というと、死後の意思を伝えるという意味では先ほどのエンディングノートに似ています。遺言はエンディングノートの役割に加えて、法的な拘束力を持つことが特徴です。
そのため書式やお手続きが細かく決まっており、法的に認められるものを作るためには専門家へ依頼する必要があります。そのため、遺言作成にはある程度費用も発生します。
遺言で法的な拘束力を持つ対象は財産の行き先が中心ですが、それ以外にも未成年後見人の指定(未成年の子供がいた場合、面倒を見る保護者を決めること)や子の認知なども認められています。

・生前贈与
生前に財産を贈与することです。本人が生きているうちに行われるのでより明確に本人の意思が実現されやすくなりますが、相続税対策や遺産分割対策という意味も持ちます。生前贈与に対して遺言で財産を贈与することを遺贈(いぞう)と言います。

・民事信託(家族信託)
たとえば障害を持ったお子さんがいらっしゃるとき、このお子さんへ毎月お金が振り込まれるよう親戚に頼むような事例です。頼まれた方は、相続とは異なり自由にお金を使うことはできません。その代わり頼まれた方が破産しても、民事信託のお金は差し押さえられないため安心してお金の管理を任せることができる制度です。
このように民事信託では、遺言の財産相続だけではカバーしきれない契約を交わすことができますので、広い範囲でご本人の意思を実現する仕組みとして注目されています。
ただ、新たに発展してきた制度でもありまだあまり過去に実例がないため、頼りになる詳しい専門家は現状ではかなり希少な状況です。実際にどう使うのが適切なのかは今後明らかになっていく、広まっていくと期待されています。

・生前事務委任
たとえば高齢者が老人ホームから電話できるように携帯電話を契約するようなとき、委任状を毎回高齢者に書いてもらうのは大変かと思います。このように本人の体が不自由で外出が困難なとき、委任状を毎回書いてもらうのではなく一括で「契約を変わりに行う人」を決めるのが生前事務委任です。
特に医療や介護関係の手続きも生前事務委任をお願いできるため、近年ニーズが高まっています。

・成年後見制度
生前事務委任は「体が思うように動かない」方への契約ですが、こちらは認知症など意思能力が低下した方への対処です。おおまかに分けて任意後見契約という制度と、民法上の制度である法定後見制度とがあります。
よりご本人の希望をかなえる、という目的に沿えるのは任意後見契約で、よく生前事務委任契約とセットで取り交わされます。これは、ご本人が自分で意思を表明できなくなった際にスムーズに契約を切り替えるためです。

・死後事務委任
通常、ここまでご紹介した委任契約は本人が生きていることを前提にしています。また成年後見制度も本人が亡くなれば役割が終わります。しかし、「どういった葬儀をするか」「どんなお墓に納骨してもらうか」に関しても本人意思を実現したいというニーズは広くあるのではないでしょうか。
遺言は財産分与についてカバーしますがこういった領域は範囲外ですし、民事信託のように大がかりな仕掛けを用意するのは手間もコストもかかります。こういった場合に、この死後事務委任契約が適しています。
これまでの例では、世話を焼いてくれそうな身内がいない高齢者が支援団体との間で契約として締結する場合が多いようです。

・見守り契約
もし死後事務委任契約を結んでいても、その受任者が遠隔地であったり、たまにしか会えないなど「ご本人の死」に気が付かなければ制度が無意味となってしまいます。見守り契約は、ご本人のいらっしゃる場所へ定期的に伺う契約です。
「亡くなった後、気付いたときには合祀墓(複数の方がお入りになる共有のお墓)へ納骨されていた…」といった場合には、生前希望されていたお寺の納骨堂に納骨し直したいと思っても後の祭りですから、死後事務委任契約と見守り契約を一緒に締結される方も多いようです。また、リビング・ウィルを用意された方が「確実にリビング・ウィルの内容を実現してほしい」という目的で行われる場合もあるようです。


大切なひとと考える『これからハンドブック』

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