看取りを知る

親の元気なうちに準備したいこと

万が一の備えは難しいものです

取りを終えたご家族にお話を聞くと、安堵感よりも様々な後悔を口にする人が少なくなりません。体調を崩した身近な人に、もっとこうしてあげれば良かったのではないか、選択した医療、介護をゆだねた施設の選択は間違っていなかったのか、もう少し家族とのふれあいの時間がとれたのではないか。周りから見れば立派に看取りを終えたように見えても、身内の死を前に、心の中で、努力が足りなかったのではという想いが募ってくるのです。「看取り」は、その途上では見えてこなかったいくつもの失敗の積み重ねの上に成り立っているのかもしれません。

身近な人の体調の急変は、「ある日突然」やってきます。命に別状はないのか。手術はうまくいったのか。入院先はどこ。頭の中にいろんなことが巡ります。しかし、病院にあわてて駆けつけたところで、検査結果が出るまでは何も分からない、という現実が待っています。その先のことなど想像もつかないでしょう。あなたは、入院手続きをテキパキと処理できますか。医師と今後のことを話し合うことができますか。退院後の介護は、どこで、誰がするのでしょう。突然に押し寄せてくる様々な問題に、否応無しに巻き込まれ、気がついたときにはどっぷりと浸かっている。身近な人の急変から介護の必要な状況に至るまで、振り返ってみると訳の分からない混乱のなかでスタートしているのです。

では、万が一に備えて準備をしておくことがはたしてどのくらい可能でしょうか。現実的に考えると、なかなか対応を考えることはできないものです。身近な人が体調を崩して入院してしまう、などということは必要以上に考えたくないことです。生命保険や入院保障のついた保険には多くの方が加入していますが、誰もがすぐにその必要性が生まれるとは思っていません。日々、元気に暮らしていることを想定して生活しているはずです。「万が一」の事態は、結局のところ、ことが起こってからでなければ現実味のないことなのです。必要なことは、何が起こっても冷静に対処しようという心の準備をしておくことです。ただ、慌てふためいて何もできないことにならないように、必要最低限の備えを考えておきましょう。

親の「生活情報」と「健康情報」を把握しておきましょう

般論をお話しします。脳梗塞で倒れた場合、緊急処置で一命を取り留めたあとは、しばらくの間、予断を許さない状況が続き、検査が繰り返し行われます。骨折ならば、治癒するまでの大体の目安は分かるでしょうが、その間、どのような暮らしになるのか見当がつかない状況に追い込まれます。分からないことだらけの状態に、不安だけが大きくなるのが関の山です。
そんな中での対応は、必要な入院手続きと入院に必要な備品を準備することくらいしかできないのです。ところが、この手続きと準備の段階でつまずく人はたくさんいます。必要最低限の準備すら整っていない人がたくさんいるということです。
考えてみてください。離れて暮らしていた親、あるいは同居していても親のことは意外と知らないものです。健康保険証、介護保険証、預金通帳と印鑑が実家のどこに保管されているのか知っていますか。親の持病、飲んでいる薬やアレルギー症状の有無、ひょっとして血液型は。手術歴なども知らないケースが多いのです。つまり、「親の健康情報」「親の生活情報」を事前に知っておくだけで、親の入院に関する手続きは完璧に対応できます。
これらの事前準備は、親が体調不良に陥ることを望んでいることには繋がりません。親とのコミュニケーション不足を補うことだと考えれば、事前準備に取り組むことはそれほどハードルの高い事柄ではなくなります。親が元気なうちに情報収集をしておきたいものです。

  • 親が入院したときに
    知っておきたいこと
  • □ 健康保険証
  • □ 介護保険証
  • □ 預金通帳
  • □ 印鑑
  • □ 持病
  • □ 飲んでいる薬
  • □ アレルギー症状の有無
  • □ 血液型
  • □ 手術歴
  • □ 生命保険契約会社
  • 入院手続きと
    その他手続きに必要な事柄
  • □ 新聞販売店の連絡先
  • □ 水道・光熱費の引き落とし状況
  • □ 習い事教室の連絡先
  • □ 入院を知らせたい人リスト
  • □ パソコンの情報
  • 準備しておくとよいもの
  • □ パジャマ
  • □ 下着と靴下
  • □ 歯ブラシ・シャンプー
  • □ ノート・筆記用具
  • □ 携帯ラジオ

現実に目を向けてみましょう。病院に搬送され入院となった場合、駆けつけた家族に待っているのは入院に必要な手続きです。健康保険証、印鑑、入院申込書、病院によっては、入院保証金を求められるケースがあります。入院申込書には、患者の氏名・生年月日・住所、連絡先などを記入し、場合によっては病歴やアレルギー症状の有無などの書き込みを求められます。対処法は、親の健康情報や健康保険証などの保管場所をチェックしておけば問題ありません。保険証はとりあえずコピーを提出するだけでも大丈夫です。
さらに、入院生活に必要な備品は、病院側が「入院の案内」という冊子を用意していることが多いので、その指示に従ってください。入浴用の洗面器やシャンプーまで指定している病院がありますが、緊急時ですから、病院が指示するものを準備することです。必要なものは病院内の売店においてあるので、入院後で間に合います。
寝間着、下着、靴下、筆記用具やノートはいつでも持ち出せるように家に準備しておきましょう。台風や地震に備えて避難用品を準備している家庭も増えています。いざというときには、衣服なども入っているので、それを活用することもひとつの方法です。
入院が長引く可能性が高いときは、新聞を止めるための販売店の電話番号、水道光熱費の引き落とし状況、習い事をしていた場合の欠席の連絡方法、親が緊急事態を誰に知らせたいのかを確認し、その連絡先一覧などが必要になってきます。
ここにあげた項目くらいは事前に確認して記録しておきましょう。ここまで整っていれば、1日ですべての手続きを終えることができます。しかし、多くの家族は、これらの情報に関する把握ができていないケースが大半を占めています。入院の手続きが終わらなければ、その後の対応が始まりません。何度も、病院に通ううちに、その煩わしさに疲れ果てて、一気に、その先の対応に意欲をなくしてしまうケースも少なくありません。親が入院したからといって、何日も仕事を休むわけにもいかないでしょう。

  • 家族・親族に話すべき項目
  • □ 親の入院から現時点までの状況
  • □ 退院後に考えられる転院先
  • □ 最終的に、在宅で面倒をみる必要性
  • □ 介護保険の手続きをとったこと
  • □ 在宅介護を考えていること
  • □ 介護施設への入居はとても難しい状況であること

実は「看取り後のことにも向き合って準備したい」という意識も強くなっていました

2016年8月に東京・日本橋にて開催された、がん医療フォーラム「Japan Canser Forum」参加のがん患者さんとそのご家族から、看取った後のこと、具体的にはお葬式やお墓といったことまで網羅されている『これからハンドブック』についてのアンケートをとったところ「本人が元気で終活を考えているときに入手したい」と答える方が過半数でした。『いざという時を迎える前に「これからのこと」にちゃんと向き合って準備したい』とする意識が、患者さん本人や家族のあいだで高まっていることが浮き彫りとなる結果となりました。

JCF 2016

大切なひとと考える『これからハンドブック』

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