看取りを知る

お金の準備、延命のこと、
大事だけれど触れにくいあれこれ

お金のことがやっぱり気になりますよね

護の費用はいったいいくら準備しておけば良いのか。そんな質問を受けることがよくありますが、その答えはとても難しいものです。介護の期間がどのくらいになるのか、あるいは、在宅で面倒を最期まで見るのか、施設に入所するのか。介護の条件によってかかる費用には違いが出てきます。さらに、親に万が一のことが起きることを想定して、事前に「介護費用」を準備することはとても難しいものです。

現在、民間の介護保険もありますが、その内容は、介護度が3以上になったときに一時金が支払われる内容の保険が多く、実際の介護に即した商品にはなっていないように感じます。がん保険が、長年かけて熟成されてきたのと同じくらいの期間がかかるように思われます。

そこで、目安になってくるのは親の年金が月々いくらくらいあるのかをしっかりと把握することです。基礎年金だけだと月額65,000円程度です。これだけでは、月々の介護費用をまかなうのは非常に難しいと考えられます。その場合、著敷くはいくらくらいあるのかを確認する必要があります。

ざっくりと計算してみましょう。在宅・施設介護に関わらず、雑費も含めると月額20万円近くの費用を考えておく必要があると言われています。在宅の介護費用、住宅改修費、月々にかかる食費や雑費を計算すると、これくらいかかるものです。施設でも民間の有料老人ホームだと軽く20万円はかかります。年間で240万円を想定してください。これが5年間続くとすれば、1200万円になります。とてもじゃないけれどそんなお金はないと思う方の方が多いはずです。では、その半分の費用に削減した場合、それでも5年間で600万円かかります。施設での入居は公的施設以外に考えられない条件を加味して、仮に入所できた場合でも10万円はかかります。となれば、雑費分は持ち出しになります。
とかく介護にはお金がかかるのです。親の年金と貯蓄をやりくりしながら、不足分をどうやって捻出するか。年間50万円分くらいの持ち出しをやりくりできる家計の力を備えておくしかありません。

では、親の持ち家を処分して介護費用に充てるという考え方もあります。しかし、親が残してくれた財産を当てにしている子の立場からすれば、介護費用に消えていくのはなかなか難しい判断を迫られるところでしょう。実際、親が生きている間に資産を売却するのも気が引けるところです。
家計のなかに、親の介護費用に振り向けることができるお金を少なくとも1年分(20万円くらい)確保しておくことです。実際に介護が始まった場合、その後の費用の捻出はその段階からやりくりを考える。介護が始まったとたんに資金繰りに困ることがないように準備しておきましょう。

どこまで続くのか、という不安に耐えるために

前、こんな原稿を書いて怒られた事があります。
「今、親が死んでくれれば泣いてあげられるのに。これ以上、介護が続くと涙も出なくなる」
介護に直面している家族の本音です。でも、親が亡くなったときには、もっとこうしてあげられたのではないかという後悔に心が締め付けられるような状態に追い込まれるのです。
「今、亡くなってくれたら泣ける」。これくらい追い込まれても介護から逃げることはできません。とにかく不安が大きくなる毎日に打ち勝たないと、介護の成功者にはなれないのです。

介護をやり遂げた方々は、毎日、小さな幸せに喜びを感じる繰り返しを心がけています。
認知症になった母が「ありがとう」といってくれた。それだけで、喜びを感じる。
リンゴを向いてあげると、おいしそうに食べてくれた。今日も元気に過ごすことができたとうれしくなる。
日々の出来事を前向きに捉えることしかありません。
どうして、この人はこんなに明るいのだろう。周りが、あなたの元気な姿に励まされる。そんな介護者になってください。

考えておくことはたくさんある

護は、その場面ですぐに判断すべきことがたくさん起こります。
入院中に、酸素マスクを外すのか、点滴はどうするか。医療の専門家が判断すべきことも、家族に確認が来ます。「延命」に対してどのようなスタンスをもっておくのか、家族で話し合っておく必要があります。

施設から病院に移るタイミングも考えておかなければなりません。看取りに対応してくれる施設で最期までお願いするのか、あくまで病院での治療を求めるのか。この点に関しても家族で話し合っておく必要があります。在宅介護でも同じです。自宅で看取りをするのか、病院にゆだねるのか。事態が急変したときに、すぐに判断できる状況にしておきましょう。

亡くなった後のお葬式やお墓のこともご存命なうちは触れにくい事柄でしょう。しかし、経験豊富な訪問看護師さんの多くは、あらかじめこういったことまで考えておく、できれば本人の希望や願いを聞いておくことの大切さを語ってくれます。というのは、こういったことの準備をしていなかったがゆえに、看取った後に続く様々なドタバタの中で本来なら最も大事な「その方をゆっくりと悼む心と時間の余裕」が一切なくなってしまっている状況を何度も見ているからです。また、家族が本人の生前の内にこういったことに向き合うことで、専門用語で「予期悲嘆」といわれる喪失体験の心の準備が進みます。このことにより、その後のグリーフからの回復が大きく改善されると言われています。


大切なひとと考える『これからハンドブック』

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