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在宅医療を手に入れる

在宅医療を手に入れる方法

宅での療養生活は、医療費節約と幸せな死を迎える環境を約束してくれます。在宅介護の行き着く先、つまり、人が最期のときを迎える場所がどこか、という観点から分析すると、在宅介護の環境が充実してきたにもかかわらず、自宅で死を迎える人の比率は12%程度にすぎません。つまり、約9割近い人が病院や高齢者施設で死を迎えています。
昭和40年代当初は、この比率が全く逆で、大半の人が自宅で死を迎えました。今後、日本の介護・福祉は、在宅重視の方向性が示されています。
そこで、注目されるのが「在宅医療」の存在です。在宅医療とは、命の量を求めるのではなく、命の質を求める医療です。長寿を目指すのではなく、天寿をかなえる医療です。
この在宅医療を自宅に持ち込むことができれば、在宅介護を全うする可能性は大きく膨らんできます。在宅医のいる家庭では、介護を受けている高齢者が肺炎になっても、あわてて病院に入院させる必要がありません。在宅医の訪問診療と看護師の訪問看護を上手に利用することで、自宅でも治療が受けられるからです。
高齢者の場合、1週間ほどでも病院で入院生活を送ると、環境の変化が原因で認知症の初期症状を発症するケースも少なくありません。介護と医療の上手な使い手になることによって、高齢者の介護環境は飛躍的に改善されることは間違いありません。
しかも、病院に入院するのと、在宅医療を利用する場合には、かかる費用の面から見ても違いが生じます。
「押さえておくべき介護の基本」でも紹介しましたが、肺炎で2週間、一般的な病院に入院すると、入院基本料だけで、自己負担額が69,762円(医療保険の3割負担)かかります。これに、差額ベッド代金や食事、おむつ費用などの経費を加算すると10万円近い費用は覚悟しなければなりません。
これに対して、在宅医療を利用した場合、在宅時医学綜合管理料に往診費用、訪問看護利用費を含めても自己負担額は、月額19,700円(医療保険の3割負担)程度に抑えることができます。これに、介護保険サービス利用によって生じる自己負担額(サービス利用料の1割)がかかってきますが、住み慣れた自宅、地域での暮らしを継続できることを考えれば、そのメリットは大きいでしょう。

在宅医療に関わる医師の多くは、「自宅での療養生活は、病院のベッドの上で最期のときを迎えるのをじっと待っているような状態では取り戻すことのできない当たり前の生活を継続できます。在宅医療とは暮らしに寄り添う医療なのです」と語っています。
在宅医療に関わる医師は全国で、まだ1万人程度ですが、ネットワークは広がっています。

在宅医療にかかるお金を把握しておこう

在宅医療を利用する場合、訪問診療を行う在宅療養支援診療所と契約を結びます。 基本料金は、「在宅時医学総合管理料」と「月2回の訪問診療」の合計料金です。

この基本料に、検査、処置、薬代などは含まれていません。また、緊急時、体調を崩したときに、往診をお願いしたときは、別料金がかかります。

訪問歯科診療も活用しよう

「8020」運動をご存知ですか。満80歳で20本以上の歯を残すことを目的に始まった活動です。当初は全く達成不可能な数字と思われていたのですが、近年、驚くべきスピードで残存歯数が増加し、あと10年以内に50%以上の人が「8020」を達成する勢いです。
その一方で、心配なこともあります。自分の歯をもったまま高齢化が進むと、歯のメンテナンスがおろそかになった場合、歯周病や感染症の温床になっているケースも少なくありません。
発熱を繰り返す症状に悩まされたり、ひどくなると失語状態になって認知症を疑われるケースもあります。しかし、これらの原因が口腔内の状態が悪かったことに起因している場合が多いことはあまり知られていません。口の中の衛生状態を良好に保つことが必要です。
例えば、熱中症予防にスポーツドリンクを飲み過ぎると、含まれている糖分が、磨き残しとなった奥歯に付着して虫歯になってしまうケースもあります。
磨き残しが虫歯を誘発します。食べかすや痰が絡まり、口の中で乾いた状態のまま放置される。あるいは、全く歯石を取らないままで何十年も過ごしているケースなど高齢者の歯には危険が迫っています。
高齢者の場合、誤嚥性肺炎を発症して死に至るケースが増えています。この原因も歯磨きがおろそかになっていることが最大の要因とされています。口腔ケアをまめに行うことで、肺炎の発症率が半減することは世界的な統計でも明らかになっています。
具体的には、口のなかで動かしやすい(あまり大きくないもの)で、毛先のやわらかい歯ブラシを使うこと。磨き方は、歯の表と裏を丁寧に洗い、歯茎にもブラッシングすることが重要です。あまり強くこすると歯茎を痛めますが、適度な刺激は歯茎を強くする効果が期待できます。さらに、一度、歯科医院に行って歯の健康状態をチェックしてもらうことです。最近は、歯科衛生士が良きアドバイザーになってくれるので、安心していってみてください。


大切なひとと考える『これからハンドブック』

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