看取りを知る

認知症とはどんな病気なのか
-家族の心構えと対処法-

できるだけ早く専門医の診断を受けよう

知症の家族を抱えることになった場合、大切なことは早期発見、早期治療です。ところが、「年のせい」による物忘れと認知症とは異なる症状とわかっていてもその判断は非常に難しく、まさか自分の親が認知症だと認めたくない気持ちもあって、親の状態がおかしいなと感じた場合でも対処が遅れるケースが多くなっています。もの忘れがひどくなったなど、疑問を感じた場合は、できるだけ早く専門医の診断を受けることをお勧めします。
認知症は、医学的には次のように定義されています。
「いったんは正常に発達した脳の機能が、脳の障害で不可逆的に (元に戻らないこと)損なわれていって、記憶、思考、判断などの知的機能に支障をきたし、社会活動を営むことが難しくなっている 状態」
現在、認知症患者は200万人を超えているといわれています。認知症を引き起こす病気は 200以上もあり、その代表がアルツハイマー病と脳血管性の病気です。この2つとそれらの混合型を合わせると、認知症全休の70~ 80%を占めています。
一般的に、認知症の診断は専門医が行い、適切な 治療を行えば、症状を改善、あるいは病状の進行を遅らせることが可能になってきています。認知症の専門医の診断は、精神神経料や神経料、最近では物忘れ外来や 総合病院の老年料などで受診することが可能です。
専門医への受診を先送りするほど、やっかいな症状は増えていきます。とにかく、しっかりとした判定を受けて、どんな治療法があり、どこまで改善できるのか診断してもらいましょう。

かかりつけの医師にまず相談

知症の診断を受ける場合、大きな総合病院や大学病院を希望する人が大半です。しかし、これらの病院では待ち時間も長く、一面識も無い医師との面談は気疲れするものです。まず、いつも診察を受けている「かかりつけ医」に相談し、どの病院にどのような専門医がいるかを教えてもらう方がよいでしょう。
診察では、医師は高齢者に多く見られる物忘れの症状か、認知症なのかを判断します。その判断をするために、医師は高齢者の日常生活を良く知る家族に次のようなことを詳しく聞きます。

1 親の状態がおかしいと感じ始めたのはいつ頃か
2 具体的にどのような行動をしているのか
3 異常行動をとるきっかけがあったと考えられるか
4 今までの病気について、その経過などが質問されます。

診察を受ける前に、これらの状況に関してメモを作っておくとよいでしょう。
また、日常の生活やこれまでの人生、育った場所。さらに朝食の内容や病院までどうやってきたのかなどの質問は、本人の記憶力を確認するうえで必ず聞かれます。
ある認知症専門病院の問診の様子です。

1 ご家族の方や身近な方からの生活の情報と今までの経歴と詳細な病歴を聞きます。
2 本人にも同じように聞きながら、記憶の障害が加齢に伴うもので正常か、病的な物忘れなのかを診察します。
3 簡単な記憶テストをします。
4 脳の中の病巣を確認するために CT,MRIなどの画像検査をします。

このような診察を受けた結果、認知症と判定された場合、具体的な治療に入ることになります。しかし、認知症と診断を受け不安になり、他の専門医にも相談したいと思うこともあるでしょう。現在は、セカンドオピニオンで第二の意見を聞いてみることは認められています。「主治医に失礼になるのでは」とか、「転院しないといけないの」という心配はありません。他の医師の意見を聞くことも大切です。

家族よりもいらだちを感じているのは
本人であることを理解しましょう

知症になったからといって、すぐに、 何もわからなくなってしまうわけではありません。実際は、しっかりした部分とおかしな部分が入り混じっていることが多いのです。全く行動におかしなところがなくて、会話もスムースに交わすことができるのに、突然、おかしくなってしまう状態がおきます。
この間、本人は、自分がどうなってしまうのかという不安やいらだちと闘っています。自尊心も失ってはいません。幼児に対するような言葉を使う、 頭ごなしに叱るなどは絶対にやってはいけません。家族は本人のプライドを尊重し、本人ができることはやってもらう。病気だからといって何もさせないとかえって症状が進行してしまいます。自分も役に立っているという気持ちが生きる意欲につながります。
大切なことは、何かやってもらったときには、うまくできてもできなくても感謝の気持ちを伝えることです。認知症は、家族の対応のしかたで、進行の速度が変わってきます。また、日常生活も大切なリハビリになります。対応のコツを知って、健康的な生活を心がけてあげてください。

健康管理に十分気をつける

知症の高齢者は身体の変調や状態について言葉で十分に表現できません。当然のことながら、健康管理についての認識もかなり低くなります。家族がかかわるケアのなかで注意しなければならないのは、基本的な健康管理ということになります。
まず、健康状態に関する確認は、

1. 既往歴を確認して状況を見る
2. 食事・水分摂取状況を確認する
3. 排泄状況を確認する
4. 顔色や皮膚の状態を観察する
5. 服薬の管理を行う

などは欠かせない大切な項目になります。
ケアの場面で気にかけることは、相手の話を十分に聴き、気持ちを支えることです。何をしたいのかを理解し、認知症の人の感情・行動の意味などを推し量ってあげてください。
まず、認知症になったからといって人はプライドを失いません。名前はその人が生まれたときから使っています。ですから、名前はきちんと呼びます。呼んでもわからないと勝手に判断して、名前も呼ばずに食事を用意、排泄の世話をするなどしがちですが、それは絶対にやめましょう。敬意をもって接するという気持ちは名前を呼ぶことによって相手に伝わります。
同時に、話を聴く「かかわりの姿勢」を示してあげるのも大切なことです。「何が」「なぜ」「どのように」などで始まる質問を繰り返して、話に広がりを持たせることも重要です。会話のあり方が、相手の心に沿うことの体現となります。
最後に認知症の方と一緒に行動する心がけを持ってください。認知症高齢者に寄り添い歩くことが必要です。対象者が今何をしたいのか、どう動きたいのかという気持ち・感情に沿う形で行動を起こしてください。

排泄の失敗は必ずおきます
そのとき適切に対応しましょう

知症が進むと、日常生活にいくつもの問題が出てきます。なかでも排泄行為の失敗は、本人、家族友の大きなショックを受けるものです。排泄の失敗は、尿失禁から始まります。気をつけなければならないのは、その失禁が膀胱炎や前立腺の病気によるものでないかを確認することです。治療すればよくなる場合も多くあるので、尿失禁が起きただけで悲観するのではなく医師の診断を受けてください。
排尿の失敗の原因は、トイレの場所がわからないために起こるケースが考えられます。夜間の場合、尿意があって目を覚ましても、暗くてよく見えず、うろうろしているうちに失禁することもあります。このレベルなら、廊下の電気をつけっぱなしにしておくだけで解決するでしょう。
さらに症状が進んで、トイレの場所が分からなくなるケースでは、電気をつけて、さらにドアを開けておくことが必要です。同時に、脱ぎ着のしやすい衣類にしておくと、間に合わなくて便器を汚すことを防ぐ効果もあります。やがて尿意があっても、トイレもわからず、トイレに行く必要性さえもわからなくなってしまいます。その場合、排尿の時間を見計らってトイレに誘導するなど、排便の管理が必要です。
夜になってもなかなか眠らないで、家の中をうろうろしたり、夜中に何度も起こされたりするようになります。夜寝られなくなるのには原因があるはずです。昼寝を必要以上にすると確実に眠れなくなります。高齢になると睡眠のサイクルが短くなるので、できるだけ昼間は寝かさないようにする方法を考えてください。


大切なひとと考える『これからハンドブック』

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